特集 呼吸とアンチエイジング最前線
呼吸筋と胸壁の加齢による変化と呼吸法
アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.4, 63-68, 2019
全身の臓器の加齢変化により,それぞれの機能が衰え,普段の生活に支障をきたすようになってくる。呼吸器系の老化は肺機能検査上,総肺気量(TLC),1秒量(FEV₁)の減少や機能的残気量(FRC),予備呼気量(ERV)の増大として表れてくる。呼吸機能の衰えは身体活動を制限してしまうため,呼吸機能をいかに維持し,健康的に年を取るかが高齢化に向かう社会においては重要である。ヒトの肺は20~25歳で完全に成熟し,最大の機能を発揮するが,それ以降は毎年1%の割合で機能は減弱していく1)。加えて,肺がんや間質性肺疾患など多くの呼吸器疾患が高齢者の加齢変化に関わってくる。特に,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)はその症状,運動制限から予後を悪くしている。したがって,いかにこれらの疾患を最小限に抑えるか,そして健康的老化が日々の生活の身体活動を維持するのに大切な要素となる。加齢に伴う最も重要な生理的変化は,肺の弾性力の低下,胸郭コンプライアンスの低下,そして呼吸筋力の低下であり,前述した肺機能検査で数値の変化として表れてくる。胸郭コンプライアンスの低下は加齢とともに変化する骨格の変化による影響が大きいため,胸郭を構成する呼吸筋とともに,いかに加齢変化を抑えていくかが,呼吸機能を維持し,日々の生活を支障なく過ごしていくために必要なことである。
「KEY WORDS」機能的残気量,胸郭,呼吸筋,横隔膜,肋間筋
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。