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特集 呼吸とアンチエイジング最前線

肺の機能と老化

桑平一郎

アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.4, 27-32, 2019

図1に呼吸調節系の概要を示す。橋および延髄にある呼吸中枢から出力されたシグナルは,効果器である横隔膜や肋間筋など呼吸筋に伝達されて換気が生じる。随意的な換気の調節を行う場合には,大脳皮質も関与する。換気の結果,肺では酸素を取り込み,二酸化炭素を排出するガス交換が行われ,血液中に取り込まれた酸素は循環器系によって末梢の臓器・組織へと運搬される。効果器での筋肉や関節の物理的な動き,ガス交換により生じる動脈血pH,酸素分圧,二酸化炭素分圧の変化などは情報として受容器に伝達され,さらに呼吸中枢へとフィードバックされる。その結果,安定した呼吸が維持・継続されるのである。
本稿のテーマである加齢は,図1のすべての領域に影響を及ぼす。老化が記憶力に影響するように,中枢神経系の一部である橋や延髄の呼吸中枢も加齢の影響を受ける。下肢の筋力と同様,効果器である呼吸筋の筋力も次第に減弱し,受容器の反応性にも影響が現れる。これらに加え,肺は外気と直接接することから,常に感染のリスクがあるが,老化とともに免疫力や気道粘膜の粘液線毛系の機能が低下することから,高齢者肺炎などの頻度が増加する。誌面の都合上,これらの領域すべてについて言及することはできないので,本稿では,特に呼吸機能の加齢による変化を中心に解説を行う。
「KEY WORDS」加齢,呼吸機能,成長,発達,老人肺

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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