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特集 呼吸とアンチエイジング最前線

導入短論説:肺は健康長寿のかなめ─美肺延年のすすめ─

福地義之助

アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.4, 18-21, 2019

加齢(aging)は,生誕から死亡に至るすべての時間の経過に伴う事象の総称であると理解できる。したがって,徐々に機能が低下して死に至る加齢後半期の過程を特異的に指す用語としては,生後の発達,成熟を経て身体機能が頂点に達するまでの加齢の前半期をも含む加齢ではなく,老化(senescence)をあてるのが学術用語としては本来的な整合性があると考える。この意味で,高齢者に生じる肺の形態や機能が明らかに老化の影響を受けている場合に老人肺(senile lung)と呼ぶことは受け入れられている。高齢者では,すべての人に生じる普遍的な生理学的加齢(physiological aging)に加えて,環境要因や疾患など個別的な外的障害因子が惹起する病的加齢(pathological aging)の両者が存在すると考えることが,長い時間軸を考慮すれば妥当であろう。実際には,臨床的に診断可能な病的加齢変化とされる疾患を除外できた高齢者の肺が老人肺として検討されてきた。
最近の研究では,老人肺の形成には若年期からの発達障害の関与もあることが明らかにされたこともあり,加齢が肺に及ぼす影響が老化に限定されず,それ以前の本来の加齢全域にわたって研究される必要が生まれる状況になっている。アンチエイジング(anti-aging)研究が,抗老化(anti-senescence)研究にも同義的に対応する時代の到来がみえてきたように思う。
「KEY WORDS」スマートエイジング,老化遺伝子,老人肺,美肺延年,調息加餐

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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