特集 呼吸とアンチエイジング最前線
特集にあたって
アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.4, 17, 2019
呼吸器の病因,病態,診断,治療などを対象とする研究領域は,20世紀の後半までは主要標的内臓器官である肺を中心に展開してきた。このため肺の研究を意味する「Pneumology」「Pulmonology」などの学術用語があてられてきた。しかし,呼吸運動は肺を駆動する胸郭,呼吸筋,呼吸調節などの総合的関与があって完結することが明らかにされた1980年代には,呼吸器系をシステムとして研究することを強調する「Respirology」が導入されて現在に至っている。時を同じくして,高齢化社会から超高齢社会に人口動態が大きく変動して,この領域の研究に取り組む加齢科学(aging science)が脚光を浴びる状況になっている。特に日本は,世界でも例のない勢いで人口の高齢化が進んでいる。呼吸器系では長年,トレーニングにより運動耐容能の低下速度を落とすことに力を注いできた。しかし現在では,負荷をかけるよりも身体活動を高めるために,呼吸機能をいかに維持するかに力がそそがれている。
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