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特集 老化と炎症

ショウジョウバエにおける細胞老化とSASPの制御機構

吉田大祐井藤喬夫井垣達吏

アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.3, 24-29, 2019

細胞老化は細胞周期が不可逆的に停止する現象であり,Hayflickによるマウス線維芽細胞の長期培養実験によって見出された1)。Hayflickが見出した細胞老化は複製限界に達した細胞で起こる現象であったが,その後,DNAダメージや活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)などのストレスによって複製限界に達していない細胞でも細胞老化が誘発されることが哺乳類細胞で見出された2)。いずれの細胞老化現象も,細胞周期停止が潜在的に可逆的なearly senescence(初期老化)と,不可逆的なfull senescence(完全老化)に分けることができる3)。完全老化を起こした老化細胞は,サイトカインや増殖因子,プロテアーゼ,ケモカインなどの分泌因子を高発現し,それを受容する周辺細胞において炎症応答や細胞増殖が促されるsenescence-associated secretary phenotype(SASP)と呼ばれる現象を引き起こす3)4)(表1)。一方で,細胞老化は個体老化を促進することが報告され,これにはSASPに伴う炎症が関与する可能性が考えられている5)6)。これらの知見は哺乳類を用いた研究で示されてきたもので,無脊椎動物においても同様の現象が保存されているかについては不明であった。我々は最近,ショウジョウバエにおいても細胞老化やSASPが存在することを見出し,細胞老化における細胞周期停止とSASPの両方にストレスキナーゼであるc-Jun N-terminal kinase(JNK)が重要な役割を果たすことを明らかにした7)-9)。一方で,ショウジョウバエ腸管においてJNKシグナルの下流でSASP因子Unpaired(ショウジョウバエIL-6ホモログ:以下,Upd)/インターロイキン(IL)-6が発現上昇することで個体老化が促進することが示され10),JNKは細胞老化に付随する細胞周期停止,SASP,個体老化という3つの現象を制御する鍵分子であることがみえてきた。本稿では,ショウジョウバエで明らかになってきた細胞老化の分子カニズムとその個体老化への関与について,特にJNKに注目しながら概説する。
「KEY WORDS」細胞老化,ショウジョウバエ,SASP,がん,JNK

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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