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特集 胆汁酸とアンチエイジング

消化器生活習慣病における酸化ステロールの意義

池上正屋良昭一郎村上昌岩本淳一宮崎照雄本多彰

アンチ・エイジング医学 Vol.15 No.2, 36-42, 2019

酸化ステロールはコレステロールの酸化物であり,付加した酸素の位置によって多くの種類が存在する。酸化ステロールにはコレステロールから酵素的に生成されるもののほか,非酵素的なラジカル酸化(autoxidation)によって作られるものがある。酸化ステロールは,①コレステロール異化~胆汁酸合成の中間産物,②細胞に炎症やアポトーシスを誘発する細胞障害物質,③脂質代謝・免疫制御蛋白のリガンドとなる生理活性物質,という少なくとも3つの異なる性質を有し,それぞれの視点から研究が進んでいる。
コレステロールの異化は従来,肝臓で特異的に行われると考えられてきた。しかし,1990年代後半に,マクロファージで27-hydroxycholesterol(27-HC)が,脳で24S-HCが生成され,コレステロールよりも効率よく肝臓に逆輸送され,胆汁酸に異化されていることが報告された。現在では,特に中枢神経系でのコレステロール異化のメカニズムと意義に関する研究が盛んに行われており,また細胞障害物質としての酸化ステロールの役割は主として動脈硬化や加齢黄斑変性などの領域で研究が進んでいる。
蛋白リガンドとしての酸化ステロールの役割については,核内レセプターであるliver X receptor(LXR)に関する研究が幅広く行われている1)。LXRは別の核内レセプターRXRとヘテロダイマーを作って存在しているが,リガンドである酸化ステロールが結合し,リガンドである9-cis retinoic acidが結合したRXRとセットになり,転写を活性化する。これによって発現する代表的な分子は,ABCA1のようなコレステロール排泄を促すトランスポーターや,コレステロールの取り込みを行うLDLレセプターの分解を促進するIDOL(inducible deregulator of the low density lipoprotein)である2)。すなわち,細胞内コレステロール過剰により産生される酸化ステロールによりネガティブフィードバックをかけ,細胞内コレステロール濃度の恒常性を保っている。その他にも,SREBP2(sterol regulatory element binding protein 2)とともに小胞体に存在し,SREBP2が活性化されて核に移行するのを抑制=コレステロール合成を抑制する,insulin-induced gene蛋白(INSIG)が酸化ステロールによって活性化することも明らかになった3)
これまで脂質代謝とは縁遠いと考えられていた疾患でも,酸化ステロールの重要性が明らかになってきたが,本稿では,脂質代謝の中心である肝臓の代表的な疾患(非アルコール性脂肪性肝疾患と慢性C型性肝炎)での酸化ステロールの示す意義について,我々の研究データを交えながら最近の研究報告をレビューする。
「KEY WORDS」酸化ステロール,liver X receptor(LXR),非アルコール性脂肪性肝炎,慢性C型肝炎

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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