総説
腸脳連関と生活習慣病
アンチ・エイジング医学 Vol.14 No.6, 81-91, 2018
消化管には全身の免疫担当細胞の約8割が集結している上,消化管自身が多彩なホルモン・生理活性物質を産生する内分泌臓器であり,血糖値,食欲,体重の調節に大きな役割を果たしている。DPP-4阻害薬やGLP-1/GIP受容体作動薬の標的分子であるインクレチンはその代表格である。大腸には人体の総細胞数(約60兆個)をはるかに上回る100兆個以上,総重量で1~1.5kgもの細菌が感染症を起こすことなく共生している。糞便容積の半分以上は腸内細菌の死骸であり,腸内細菌数が少ないひと,換言すれば,善玉腸内細菌の餌となる食品(未精製全粒穀物,食物繊維,根菜,緑黄色野菜,豆類,ナッツ類など)の摂取が恒常的に少ないひとでは糞便量が減少し,慢性便秘症のリスクを招く。
腸内細菌はフローラ(叢)と呼ばれる数種類のグループを形成しており,ヒトの腸内細菌叢はBacteroidetes門,Firmicutes門,Proteobacteria門,Actinobacteria門の4つの主要グループで全体の腸内細菌の99%を占めている1)。
「KEY WORDS」発酵,短鎖脂肪酸,未精製全粒穀物,腸脳連関,γ-オリザノール,消化管粘膜バリア機能障害,腸脳力
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