特集 食品の糖化,生体の糖化,抗糖化
マンゴスチンおよびスイゼンジノリにおけるAGEs生成阻害効果と健康効果
アンチ・エイジング医学 Vol.14 No.5, 45-48, 2018
これから糖化阻害剤(AGEs生成阻害剤)について解説するにあたり,まずはその背景について紹介したい。生体内においてAGEs蓄積による病態進展を抑制する方法は主に,①AGEs生成を阻害する,または②生成されたAGEsを分解することで蓄積を阻害する「AGE breaker」1),そして③AGE受容体の拮抗阻害2),の3つに大別される。本研究室では,主に①のAGEs生成阻害について天然物由来成分からの探索を行っている。
還元糖とタンパク質の非酵素的な糖化(メイラード反応)は,前期反応においてアマドリ転位生成物を生成し,その後,後期反応によって非可逆的にAGEsへと変化する。上記①のAGEs生成を阻害する方法はさらに,(ⅰ)還元糖やカルボニル化合物をトラップし,これらがタンパク質と反応するのを阻害する,(ⅱ)Nε-(carboxymethyl)lysine(CML)など酸化依存性AGEsの生成を抗酸化物質で阻害する,(ⅲ)メチルグリオキサールなど代謝経路から生成する反応性の高いカルボニル化合物の生成自体を抑制する方法などがあげられる。AGEs阻害剤として最も初期に報告されたアミノグアニジンは,(ⅰ)の機序でAGEs生成を阻害する合成化合物である3)。アミノグアニジンの投与は,糖尿病性腎症患者において網膜症の進展を有意に抑制するが4),核酸や好中球に対する自己抗体の出現や,半月体形成糸球体腎炎の発症などの自己免疫疾患様の副作用が認められており,臨床応用には至っていない。したがって,アミノグアニジンに代わる新規のAGEs生成阻害剤の開発が必要である。アミノグアニジンがAGEs生成阻害剤として報告された1980年代は,まだAGEs構造の大半が不明であり,AGEs生成阻害剤の探索も困難であったと思われる。しかし,近年AGEs研究が進み,各AGEs構造を特異的に認識できる数種のモノクローナル抗体が開発されたことによって5),Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)を用いた簡便な多検体分析が可能になった。この手法を用いて,本研究室では食習慣がある天然物成分から比較的副作用が少なく,AGEs生成抑制効果を有する化合物をスクリーニングしており,今回はそのなかから高い効果が得られたスイゼンジノリとマンゴスチンを紹介したい。
「KEY WORDS」AGEs,生活習慣病,糖尿病合併症,マンゴスチン,スイゼンジノリ
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。