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特集 食品の糖化,生体の糖化,抗糖化

糖化とは何か?

食品化学から見出された生体タンパク質の変性機構

永井竜児白河潤一大野礼一須川日加里山口広子木下奨佐藤ひかり勝田奈那砂掛詩織荒川翔太郎鈴木隆介永井美芽

アンチ・エイジング医学 Vol.14 No.5, 24-31, 2018

この数年,糖化(とうか)という言葉をあちらこちらで耳にするようになった。これは,グルコースなどの還元糖,あるいはカルボニル基を有する化合物が,タンパク質やアミノ酸のもつアミノ基と非酵素的に反応するメイラード反応と同じであり,報告されてからすでに100年以上の歴史のある化学反応である。
本反応は当初,糖質とアミノ酸を混ぜた状態で保存,あるいは加熱調理すると褐変化する反応として見出され,芳香の源,栄養価の低下などに関する研究として食品化学の分野で発展した。たとえば,海外ではブラウンチーズやコーヒーの芳香に関する反応として,日本では味噌や醤油の芳香,味の深み,褐変に寄与する反応として研究が行われてきた。よって,わが国には食品分野におけるメイラード反応の研究者がこれまで多く存在する。1968年に報告されたヘモグロビンA1c(HbA1c)は,ヘモグロビンにグルコースが結合したメイラード反応前期生成物のアマドリ転位物であるが,すでに糖尿病の血糖マーカーとして世界的に利用されている。その後,アマドリ転位物は酸化,脱水,縮合反応などによって蛍光性,褐変化,架橋形成などの特徴を有するAdvanced Glycation End-products(AGEs)へと変化する。1984年になるとMonnierら1)が,脳の外側にある脳硬膜コラーゲンにAGEs特有の蛍光性物質が蓄積し,加齢に伴って蛍光強度が増加して,さらに糖尿病患者ではその蛍光強度が亢進していることを明らかにし,生体でもメイラード反応は後期まで進行していることが示唆された。1990年代になると,AGEsの生体内局在なども解析する目的で,抗AGEs抗体を用いた免疫化学的な解析や,機器分析による生体AGEsの精密定量がなされるようになった。本稿では,最近,分子レベルで明らかになってきたAGEの生体に対する作用,AGEs研究における注意点などについて紹介したい
「KEY WORDS」AGEs,糖化,炎症,AGEs生成阻害剤,生活習慣病

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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