他の生理機能と同様に概日リズム機構も加齢の影響から免れることはできない。ヒトでは,生後間もない乳幼児の睡眠-覚醒リズムは不明瞭な形で出現し,徐々に母性行動や光などの外的因子に同調したリズムが形成される1)。成人期では,生理的睡眠-覚醒リズムは安定し,ホルモン分泌などは顕著な概日リズムを示す。しかし,老年期になると,次第に「早朝覚醒」,「中途覚醒」などの睡眠障害を自覚することが多くなり,ホルモン分泌リズムの振幅低下なども認められる2)。これらの加齢による概日リズム機能低下の主因として,全身の概日リズムを統合する体内時計中枢である視床下部・視交叉上核(suprachiasmaic nucleus:SCN)の機能低下が考えられる。本稿では,現在までにわかっている加齢による概日リズム低下の神経機構について解説する。
「KEY WORDS」概日リズム,視交叉上核,神経発火活動,時計遺伝子
「KEY WORDS」概日リズム,視交叉上核,神経発火活動,時計遺伝子