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特集 女性ホルモンとアンチエイジング

OC・LEP,HRTの現状と未来

小川真里子髙松潔吉丸真澄

アンチ・エイジング医学 Vol.14 No.3, 31-36, 2018

女性が男性より長寿であることはよく知られているが,平成28年の簡易生命表によると,日本人女性の平均寿命は87.14歳と,現在も年々延長の一途をたどっている。大正時代の末頃には平均寿命が43歳ほどであったといわれることを考えると,今はほぼ倍の年齢になっているが,一方,閉経年齢についてはあまり変化がなく,現代の日本人女性における閉経年齢の中央値は50.54歳(10パーセンタイル閉経年齢,90パーセンタイル閉経年齢はそれぞれ45.34歳,56.34歳)と報告されている1)。つまり,日本人女性は約37年間を閉経後の状態で生きることになる。
日本人女性は長寿であるが,健康寿命は決して延長しているとはいえない。健康寿命の阻害要因となる主な疾患としては,脳血管疾患,認知症,高齢による衰弱,関節疾患,骨折・転倒などが上位を占めており,健康寿命の延長にはそれらの疾患の予防が必須となる。
女性の身体には至るところにエストロゲン受容体が存在しており,脳や骨などの臓器にも影響を及ぼしている。閉経とともにエストロゲンレベルが低下し,血管運動症状などのいわゆる更年期障害だけでなく,脂質異常症や骨粗鬆症などといった,いわゆる退行期疾患と呼ばれるさまざまな疾患・病態が惹起されるが,これらの退行期疾患はいずれも将来的な健康寿命の短縮に関わる可能性がある。それぞれに特化した治療法はもちろん存在しているが,低下したエストロゲンを投与するホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)は理に適った方法であり,HRTだけで多くの疾患・病態に効果をもつことが知られている。
一方,未閉経女性に対して使用される主なホルモン製剤としてはOC〔Oral Contraceptive;(低用量)経口避妊薬〕およびLEP(low dose estrogenprogestin;低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)があるが,本来の避妊と月経困難症に加えて,副効用についても広く知られるようになっている。日本人女性はホルモン製剤に対する心の壁が高く,いまだ他の先進諸国に比べてユーザーが少ないのが現状であるが,日本でも未閉経女性と閉経後女性がともにホルモン製剤をうまく取り入れ,OC・LEPユーザーが適切にHRTに移行していくことが,女性のQOL(quality of life)改善に寄与する一助になると考えられる。
「KEY WORDS」エストロゲン,OC・LEP,ホルモン補充療法,投与法

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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