形成外科日常診療において,骨盤内腫瘍や乳がん術後数十年を経て発症した二次性リンパ浮腫や,その鑑別として高齢者の原因不明の下肢浮腫について精査加療の依頼を受けることは稀ではない。血栓症や心,肝,腎機能障害など内科的疾患が否定的であった場合,原因として加齢に伴うリンパ管内皮細胞の変性と静脈弁機能低下によるリンパ液輸送能の低下を考慮する。また一方で,加齢による筋力低下,廃用により引き起こされた転倒後の外傷(打撲症,骨折,外傷後手術)が契機と考えられる症例も度々経験する。加齢に伴う機能低下がリンパ管および静脈で認められることは,リンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術前のインドシアニングリーン(ICG)蛍光造影によるリンパ流評価や,顕微鏡下リンパ管静脈吻合術術中の肉眼的所見で支持できるものと考えるが,この領域において過去の検討は比較的少ない。しかし,これらが明らかとなることは,早期の圧迫や手術治療の介入時期の検討へ有効である。今回は,リンパ管および静脈の構造的変化について最新の知見を踏まえて考察する。
「KEY WORDS」リンパ管,リンパ管弁,静脈弁,リンパ浮腫