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特集 リンパ管からみたアンチエイジング

はじめに:リンパ管からみたアンチエイジング~近年のホットトピックス

渡部徹郎

アンチ・エイジング医学 Vol.14 No.2, 18-21, 2018

医療の進歩などにより,わが国は世界屈指の長寿国となり,さらに平均寿命は延長しつつあるが,その一方で超高齢化社会の進展,特に要介護高齢者の増加が日本の将来に暗い影を落としている。厚生労働省による2013年の調査では,介護を受けずに自立した生活を送れる期間を示す健康寿命と平均寿命との差,つまり平均要介護期間は男性で約9年,女性で約12年あり,平均寿命の延長に伴い要介護期間も延長することが危惧されている。このように,「幸せな老後」と「持続可能な社会」のために健康寿命を延ばし,高齢期の人生の質を高めることの社会的要請は極めて高い。要介護状態に至る要因として,認知症の発症や緑内障による失明などがあるが,こうした疾患がリンパ管の機能低下によるものであると報告がされており,注目が集まっている。
私たちの体の恒常性は,血管による末梢組織における物質交換により維持されているが,血管から漏れ出た組織液(リンパ)はリンパ管を介して血管へ還流されることで閉鎖循環系が維持されており,リンパ管の機能不全はリンパ浮腫の原因となる1)-3)。加齢とリンパ管の関連については未解明な部分が多く残されているが,近年加齢に伴うリンパ管の変化について報告がされはじめており,大きなトピックになりつつある。そこで本特集では,リンパ学のさまざまな領域において最先端の研究を展開している方々に老化の観点からリンパ管について解説をいただいた。また,特集内の総説ではカバーされなかった近年なされた興味深い発見について,本稿においてホットトピックとして紹介したい。
「KEY WORDS」リンパ管,老化,浮腫,緑内障,アルツハイマー病

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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