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総説

ヒトとイヌの共進化─視線とオキシトシンを介した関係性―

菊水健史

アンチ・エイジング医学 Vol.14 No.1, 72-77, 2018

世界には多くのイヌが,ヒトとともに生活しています。“Dogs are man’s best friends(イヌはヒトの最良の友)” といわれるように,地球上に現生する既知の全動物種約140万種のなかで,ヒトと一緒に,それも自然に過ごせる動物は,イヌが一番といえます。イヌは家畜化された,つまりヒトとの共生を始めた動物のなかでも,その歴史が最も古く,諸説ありますが,1万5千年から5万年前にはヒトとともに生活を営みはじめたのではといわれています。この長い期間をかけ,ヒトは自分の生活により適したイヌを選抜し,なんと現在では400を超える犬種が作出されてきました。その多くは特定の目的をもって作られています。ラブラドールレトリバーは,猟犬として獲物を持ち帰る行動を中心に選抜されてきましたが,その穏やかさと学習能力の高さから,現在は盲導犬や介助犬として活躍しています。また,獲物を追い詰めるための鋭い嗅覚系を兼ね備えたビーグルは,麻薬探知犬などとしても活躍しています。近年は,イヌと一緒に過ごすことによる恩恵も多くみつかってきました。たとえば,イヌとのふれあい活動は高齢者の精神面を援助し,戦争帰還兵のトラウマ障害を軽減させたりもします。イヌとの生活は心臓病の発生率を下げ,さらにはてんかん発作やがんを予知し,自閉症児の非社会的行動を軽減させるなど,さまざまな効果が知られてきました。イヌはヒトにとって,狩りなどに用いられていた一種の道具的な立場から,今では大きく変わり,かけがえのない,それこそ “友” の存在になったといえるでしょう。
「KEY WORDS」イヌ,ヒト,視線,オキシトシン,共進化

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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