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老眼が治る可能性
アンチ・エイジング医学 Vol.13 No.6, 80-82, 2017
目のエイジングといえば老眼だ。だいたい名前からして “老いる眼”。40歳以上のすべての人に起こり得る代表的な目の加齢変化である。一般的には老眼は「病気」ととらえられていないかもしれないが,老眼研究会では「何らかの介入が必要な疾患である」と定義している。症状はご存知のとおり “近くが見えにくくなること”。加齢によって水晶体の弾性が減り,レンズのピント調節力が減るために起きる。不便ですよね。でも,人によっては,老眼鏡をかけると年をとった気持ちになるので,極力かけたくないと言う。老眼鏡をかけないで,いつも見えにくいと感じているほうが,目の疲れはもとより心理的にもよくないとも思うが,まあ考えは人それぞれだ。
さて最近,慶應義塾大学のチームから “老眼は治るかもしれない” という画期的な論文が出たので報告したい。数年前から,なんとか老眼を治したいと動物実験を開始した。まずは老眼の動物モデルを作らなくてはならない。研究員の樋口明弘先生が,ラットに煙草を吸わせると水晶体が硬くなることをまず見つけた。以前から喫煙は老眼のリスクファクターだといわれていたため,これをもとに研究を開始したのだ1)。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。