アルツハイマー病の病理変化は,老人斑と神経原線維変化の出現により特徴づけられる。臨床的に認知機能低下が生じる前から,これらの脳内病理変化が出現することが,神経病理学的解析や脳アミロイドPET解析により明らかにされている。現在処方されているアルツハイマー病の治療薬は症状改善剤であり,疾患の自然歴を変えるものではない。症状改善薬により認知症の症状を一時的に改善することはあっても,脳内で生じているアルツハイマー病の病理変化は時間の経過とともに確実に進行する。アミロイドβを治療標的とした疾患修飾薬を用いた大規模第Ⅲ相臨床治験がアルツハイマー病患者を対象に行われたが,いずれの薬剤もエンドポイントを満たすことに成功していない1)。治験が失敗した理由の一つは,治療介入のタイミングが遅すぎたことにある。認知症を発症した時点までに進行した脳病理変化は多分に不可逆的な状態となり,疾患修飾薬の効果が得られにくいのかもしれない。そのため,現在進行中の疾患修飾薬を用いた治験は,より早期段階の被検者をリクルートするデザインとなっている。
「KEY WORDS」アルツハイマー病/ゲノムワイド関連解析/感受性遺伝子/APOE/ポリジェニックスコア/プレクリニカル
「KEY WORDS」アルツハイマー病/ゲノムワイド関連解析/感受性遺伝子/APOE/ポリジェニックスコア/プレクリニカル