<< 一覧に戻る

総説

HIV感染症/AIDSとエイジング

鍬田伸好満屋裕明

アンチ・エイジング医学 Vol.13 No.4, 62-70, 2017

後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome:AIDS)の病原体がヒトレトロウイルス〔後にヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)と命名される〕であることが明らかにされるや,その数年のうちにウイルスの逆転写酵素を標的とした治療薬ジドブジン(AZT)が臨床に供されるようになった。AZTが臨床に導入されて以来,AIDSに対する治療は大きく進歩した。その後もHIV特有のタンパク質を標的にした分子標的治療薬が次々に開発され,それらを種々に組み合わせた多剤併用療法(combined antiretroviral therapy:cART)は,HIV感染症/AIDSの病態と予後を著しく変えた。現在,HIV感染症/AIDS治療薬は,5つのクラス,計20種類を優に超えるほどとなった。これらの薬剤を種々に組み合わせたcARTの治療効果で,かつて「死の病」であったAIDSは,今やコントロール可能な「慢性感染症」と再定義されるようになった。しかしながら,薬剤によるコントロールで感染者・発症者の余命が非感染者のそれと同等となって,HIV感染者の高齢化が進んでいる。また,薬剤コントロール下においても慢性炎症は継続しており,HIV感染者に加齢の加速がもたらされている。本稿では,HIV感染症とAIDSについて基本的な病態,治療法(薬)の開発,および病態と加齢との関わりについて概説する。
「KEY WORDS」HIV感染症/AIDS,分子標的治療薬,多剤併用療法(cART),治療可能な慢性感染症,HIV感染者/陽性者の高齢化,HIV感染者における加齢の加速

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る