特集 エピジェネティクスとアンチエイジング
糖尿病とエピジェネティクス
アンチ・エイジング医学 Vol.12 No.6, 55-62, 2016
エピジェネティクスとは,DNA塩基配列の変化を伴わない後天的な遺伝子制御の変化を一般的に指し,ゲノムDNAのシトシンのメチル化やヒストンのメチル化・アセチル化修飾などの翻訳後修飾が中心を担っていると考えられる。たとえば,DNAのメチル化やヒストンH3のリジン27のトリメチル化(H3K27me3)は,転写不活性型として,ヒストンH3のリジン4のトリメチル化(H3K4me3)は転写活性のみられるプロモーターに,モノメチル化(H3K4me1)はエンハンサーに,ヒストンH3のリジン27に代表されるヒストンのアセチル化(H3K27acほか)は,プロモーターとエンハンサーに特徴的な修飾である。ゲノム全体のこれらの変化はエピゲノムと総称され,同じゲノムDNAを有するにもかかわらず多彩な細胞特異性を生む仕組みとして,また癌,老化,細胞記憶などさまざまな疾患や生命現象に重要な役割を果たすと考えられている。本稿では,糖尿病とエピジェネティクスについての知見について概説する。
「KEY WORDS」環境因子,細胞内代謝,メタボリックメモリー,遺産効果,GWAS,Kcnq1,インプリンティング
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