「はじめに」慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,全世界で8~16%の有病率であると推定され,日本においても,高血圧,糖尿病に次ぐ第三の国民病として認識されるようになった1)。CKDの原疾患はさまざまであるが,腎機能は加齢に伴って低下し,急性腎障害(acute kidney injury:AKI)や腎癌の発生リスクが高まることが報告されている2)。健常人においても,加齢とともに腎機能が低下し3),AKIや腎癌の発生が高くなることが知られており4)5),CKD患者と高齢者の臨床的な特徴は共通している。さらに,腎線維化はすべての腎疾患の共通した病理像であるが,加齢腎の病理学的特徴も腎線維化であり,分子学的にも共通した機序が関与していることが示唆される。これまでに,老化に関与する因子は数多く報告されているが,加齢によって増加あるいは減少する因子の中で,AKIや癌の発症,腎線維化との関連が基礎研究で示されているものとして,酸化ストレスによるDNA障害,細胞周期の停止した細胞の蓄積,抗老化蛋白であるKlotho蛋白の減少があげられる6)。
「Key Words」老化,慢性腎臓病,腎線維化,TGF-β1,ヒストンメチル化