「はじめに」原発性胆汁性肝硬変(PBC)と原発性硬化性胆管炎(PSC)とは胆管系疾患の双璧であり,胆管障害と胆管消失・閉塞をきたす慢性進行性胆汁うっ滞性疾患である。いずれも胆管消失の機序はいまだ不明であるが,胆管細胞の細胞死と細胞増殖,すなわち障害と再生のバランス不均衡が経時的に変化し,複雑な胆管病変が形成される。また,胆管は単なる胆汁排泄の導管としての役割だけではなく,胆管細胞自らがあらゆる免疫応答の主役を演じつつ炎症の場を提供する。また,PBC,PSCの病因または病態形成因子として,腸内細菌由来を含めた病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns:PAMPs)に対する胆道系自然免疫応答の関与も想定されている1)。自然免疫は,マクロファージや樹状細胞など免疫担当細胞のみではなく,あらゆる上皮細胞にも有する免疫機序であり,臓器特異的な免疫機構を形成し,胆道系を含めた肝臓も同様である。
「Key Words」胆管,細胞老化,原発性胆汁性肝硬変,原発性硬化性胆管炎,アポトーシス