「はじめに」医学の進歩により,人類の寿命は飛躍的に延びている。厚生労働省の発表によるわが国の平均余命の年次推移,すなわち,ある年齢からあと何年間生存可能かという統計学的期待値は,1947年出生の0歳児の平均余命,すなわち平均寿命が50.06歳であったのに対して,2014年出生の0歳児の平均余命は80.50歳で,実に寿命が1.6倍となっている。これは,抗生剤の進歩による感染症の制御,種々の疾患に対する治療法の進歩によるところが大きく,発展途上の国において感染症はいまだ大きな問題である。一方で,平均寿命の延長は,それまで踏み入れることのできなかったステージに足を踏み入れる,すなわちこれまでに経験したことのない疾患の発症を意味する。その過程においては,生物学的な細胞老化が組織・臓器レベルに影響を及ぼし,機能低下を引き起こすことによる病態と,老化細胞で産生される物質によって引き起こされる病態が関与すると考えられる。したがって,今後増加の一途をたどる老化関連の各臓器の病態の理解と,多臓器間のネットワークによって生ずる病態の認識が必要である。
「Key Words」肝臓,老化,発がん,肥満
「Key Words」肝臓,老化,発がん,肥満