「はじめに」ミトコンドリアは,エネルギー産生を行う重要な細胞内小器官であり,その機能の破綻は,筋力低下や中枢神経症状を主とするミトコンドリア病をはじめ,老化や糖尿病,がんなどのさまざまな疾患に深く関わっている。加齢においては,ミトコンドリア数の減少,ミトコンドリアDNAの変異,脂質組成の変化などが知られており,これらの変化は酸化的リン酸化反応の減弱,ATP産生能の低下,活性酸素の生成と酸化障害,アポトーシス関連因子の細胞質への放出などをもたらすと考えられている1)。最近の研究により,ミトコンドリアのエネルギー産生に関わる呼吸鎖複合体(複合体Ⅰ~Ⅴ)は,それぞれ単独で膜上に存在しているのではなく,複合体同士の結合により形成される"スーパー複合体"という巨大な構造体の状態で存在し,効率的に酸素呼吸を行っていることがわかってきた。
「KeyWords」ミトコンドリア,呼吸鎖,スーパー複合体,エストロゲン応答遺伝子,COX7RP