「はじめに」過去60年間にわたる多くの老化研究は,活性酸素種(ROS)による細胞構成成分の傷害と防御という観点から行われてきた。ROSの多くは,ミトコンドリアにおいてATP産生の過程で副次的に生じる。よって,ミトコンドリアのROSを減少させる方策は,抗老化機構の中心にあると考えられてきた。しかしながら,最近の研究は,ミトコンドリアにおけるROSの寿命制御における新たな役割を指摘している。 ミトコンドリア呼吸鎖複合体を構成するタンパク質に変異が起これば,極端なROSの発生,ATP産生能の低下,カルシウムイオンの恒常性の破綻などから,細胞死が誘導される。たとえば,ヒトでは,複合体ⅣのサブユニットであるSurfeit 1(SURF1)遺伝子の変異による複合体Ⅳの機能不全は,Leigh症候群を引き起こす。
「KeyWords」ミトコンドリア,寿命遺伝子,酸化ストレス,カロリー制限,呼吸鎖スーパーコンプレックス