「はじめに」摂食・嚥下機能は高齢者では衰え,頻発する「むせ」などから始まり,「誤嚥」へつながっていく可能性がある。しかし,その機能は,口腔・咽頭周囲組織の筋トレーニング,また歯科治療終了後においても改善され,摂食・嚥下機能が向上する。口腔・咽頭周囲の機能の向上は,歯科医は日常の臨床で確認でき,さらには患者の顔貌が若々しく変化する場合があることにも接している。これは口腔・咽頭周囲機能の抗加齢現象であり,そのエビデンスが基礎の研究から少しずつ集積され,明らかになってきた。すなわち,筋組織が筋トレーニングまたは歯科補綴治療によって適正な機能を発揮するようになると,筋は機能的役割を担えるように筋線維特性を変化させ,さらには特徴的な遺伝子を発現して周囲組織へも影響を与え,さまざまな抗加齢現象のカスケードにスイッチを入れていくのである。そこで本稿では,はじめに摂食・嚥下機能のメカニズムについて解説する。そして,摂食・嚥下機能が改善された結果として生じる生体内のさまざまな変化が,どのようにして筋機能を向上させていくかという視点から,最近の基礎研究の一部を紹介する。特に,筋肥大という現象に,筋幹細胞の分化開始が重要な役割を呈していることを理解していただきたい。
「Key Words」咀嚼,嚥下,摂食・嚥下,筋機能,抗加齢
「Key Words」咀嚼,嚥下,摂食・嚥下,筋機能,抗加齢

