【特集 細胞老化,臓器老化,組織老化】
腸管上皮幹細胞の老化
掲載誌
アンチ・エイジング医学
Vol.9 No.1 47-52,
2013
著者名
佐藤俊朗
記事体裁
抄録
疾患領域
消化器
/
アンチエイジング
診療科目
消化器内科
/
老年科
/
消化器外科
媒体
アンチ・エイジング医学
腸管内腔には膨大な数の腸内細菌が常在している. 腸管粘膜免疫はこれらの常在菌に対して免疫的寛容が導入されているが, 生理的炎症と称されるように, 軽度の炎症細胞浸潤が持続している. 腸管上皮細胞はこうした炎症や細菌や食餌抗原などの異物刺激に絶えず曝されており, こうした細胞ストレスはDNA傷害による遺伝子変異を誘導したり, DNAメチル化などを介したエピジェネティックな変化を誘導する. しかしながら, 腸管上皮分化細胞は4~5日程度の非常に短い寿命のため, このような細胞ストレスによる変化は一過性である. 一方, 腸管上皮幹細胞は一生を通じて陰窩底部に存在し, 娘細胞を産生し続ける. このため, 腸管上皮幹細胞における細胞ストレスによるゲノムの変化は, すべての腸管上皮細胞に継承され, 組織全体に蓄積されうる. DNA損傷は細胞老化を引き起こし, 細胞増殖が不可逆的に停止される. このことは, 変異した可能性のある細胞を効率よく排除する腫瘍抑制機構と考えられる.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。