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総説

加齢と神経変性疾患:遺伝性パーキンソン病原因遺伝子の機能解析から明らかとなってきたミトコンドリアの品質管理機構

Mechanism of Mitochondrial Quality Control by Genes Responsible for Parkinson’s Disease

今居譲 斉木臣二服部信孝

アンチ・エイジング医学 Vol.7 No.6, 56-61, 2011

Summary
 Mitochondrial dysfunction has long been believed to be one of the major causes of the etiology of Parkinson’s disease (PD). The gene products for autosomal recessive juvenile PD, parkin and PINK1, have now turned out to be directly involved in the autophagic elimination of the damaged mitochondria called mitophagy, which is thought to be required for the maintenance of a healthy mitochondrial population in the cells or tissues. PINK1/Parkin-mediated mitophagy involves the activation of the ubiquitin-proteasome and autophagy machineries, which could also be significant to other familial or sporadic forms of PD. The latest progress in PD study suggests that at least some forms of juvenile PD are characterized as a mitochondrial disorder beyond that of a neurodegenerative disorder although the validation of the disease relevance of mitophagy awaits further study.

Key words
●Parkin ●PINK1 ●DJ-1 ●mitophagy ●ミトコンドリアの品質管理

はじめに

 パーキンソン病の発症機序として,長らくミトコンドリアの機能障害が疑われてきた。たとえば,パーキンソニズムを引き起こす神経毒1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)がミトコンドリアcomplexⅠを特異的に阻害すること,動物モデルにおいて6-hydroxy-dopamine(6-OHDA),ロテノン,パラコートがミトコンドリアを障害し,パーキンソン病様の症状を引き起こすことが報告されている。さらに,パーキンソン病患者死後脳や血小板などで,ミトコンドリアcomplexⅠの活性の低下がみられるなどの報告がある。しかし,ミトコンドリアの変性が黒質ドーパミン神経の変性の直接の原因となるという証拠は得られていなかった。
 当研究室で同定した常染色体性劣性遺伝性若年性パーキンソン病(AR-JP)の原因遺伝子parkinが,別の常染色体性劣性遺伝性若年性パーキンソン病の原因遺伝子PINK1とともに,ミトコンドリアの機能維持に関与することが最近明らかになってきた。本総説では,その遺伝子産物であるParkinとPINK1がミトコンドリアの機能を維持するメカニズムに関しての最新の知見を概説する。

パーキンソン病原因遺伝子parkinとPINK1

 PARK2にリンクするパーキンソン病は,若年性パーキンソン病の主要な原因となっている。L-ドーパに対する反応性はよく睡眠効果もみられるが,早期にジスキネジアやwearing-offを起こしやすい。また,進行は遅く,認知症は伴わない。神経病理学的特徴として,レビー小体の形成はほとんど認められない。1998年に,PARK2の責任遺伝子としてparkinがクローニングされ1),遺伝子産物Parkinがユビキチンリガーゼ活性をもつことが明らかとなった2)-4)。その後,parkinノックアウトマウスの作製が多くの研究室で試みられたが,ドーパミン神経変性が再現できないことからPARK2発症機序の解析は遅れていた。
 一方,臨床症状がPARK2と酷似しているPARK6の原因遺伝子として,PINK1が2004年に同定された5)。遺伝子産物PINK1は,ミトコンドリア局在シグナルをもつキナーゼであると予想された。しかし,transcriptの発現は確認できるにもかかわらず,タンパク質の発現が確認できないため,その機能は不明であった。
 キイロショウジョウバエは,parkin,PINK1遺伝子のオルソログをもつ。これらの遺伝子をノックアウトすると,筋肉や精子などエネルギー要求性の高い組織においてミトコンドリアの変性が起こる。2006年に我々を含む3グループが,ショウジョウバエにおいてPINK1とparkinとの間に遺伝的相互作用があることを見出した6)-8)。すなわち,PINK1とParkinは協調してミトコンドリアの機能維持に関与していることが示唆された。

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