医農連携─アグロメディカル・サイエンス
3 キサントフィル生体調節機能に着目した健康長寿に役立つ高機能型農産物創出のための研究開発
Xanthophyll for Healthy Aging
アンチ・エイジング医学 Vol.7 No.6, 31-36, 2011
Summary
Development of preventive therapies for the diseases related to age and/or metabolic syndrome is a critical mission for us in this super-aging society. To continuously obtain the preventive effects, one of the leading strategies may be the usage of functional foods which have enhanced bioactivity. For this purpose, we promote bio-technological and agricultural researches to obtain appropriate foods for the therapies, as well as scientific researches to reveal and/or confirm the underlying molecular mechanism of the effects and safety. Here, we introduce a movement of using xanthophyll, such as lutein, to prevent eye diseases, such as age-related macular degeneration and diabetic retinopathy.
Key words
●酸化ストレス ●ルテイン ●予防 ●加齢黄斑変性 ●糖尿病網膜症
超高齢社会になりつつある現代において,加齢やメタボリックシンドロームにより進行する慢性疾患の予防は社会的にも大きな課題である。個人の幸福のためだけでなく,医療費削減のためにも重要である。慢性疾患の予防療法は早期から(比較的若年から)長年にわたり継続する必要があり,そのため,現在注目されているのが,生体調節機能をもつ食品因子を高含有する高機能型農産物の開発と,その継続摂取による予防医学の可能性である。予防治療は,その効果が長期間継続した後に明らかになるものであり,その普及にあたっては理論的根拠が求められるのはいうまでもない。さらに,本予防治療を実現するためには,高含有農作物の開発研究,つまり農学研究の推進も必要とされる。農作物中のキサントフィル濃度の測定法の開発に始まり,高含有品種の開発,その生産・流通システムの構築などが進むことで,食品を通した予防医学が成立しうる。
ここでは,社会的失明に至る可能性のある眼疾患に絞って,その予防法開発に向けた動きを医学の観点から紹介する。視覚は外部情報の70~80%を獲得するとされており,その障害は行動と精神の健康を大きく妨げる。一方,キサントフィルは元来,眼に取り込まれる抗酸化食品因子であり,その眼における効用に対しては期待が寄せられるが,科学的裏付けは動物実験も含め,今やっと発表されはじめたところである1)-6)。
キサントフィルとは
天然に存在する色素であり,化学式C40H56で示される基本構造をもつものをカロテノイドと呼ぶが,側鎖としてC,H以外の原子を含む化合物をキサントフィルと呼ぶ。キサントフィルは植物では合成されるが,動物では合成されず,食物から摂取して体内に蓄積するものである。主なキサントフィルには,ルテイン,ゼアキサンチン,α-およびβ-クリプトキサンチン,アスタキサンチン,フコキサンチンなどがある。カロテノイドのリコペンが酵素反応を経てβ-カロテンに変換されると,さらに酵素反応を受けてβ-クリプトキサンチン,ゼアキサンチンへと変換される(図1)。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。