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総説

分子状水素のサイエンス

Scientific Bases of Molecular Hydrogen

大野欽司

アンチ・エイジング医学 Vol.7 No.3, 58-67, 2011

Summary
 Since a prominent effect of molecular hydrogen on cerebral infarction has been reported in June 2007, effects of molecular hydrogen have been documented in 54 disease models in less than four years. Three human studies show effects of hydrogen on diabetes mellitus type 2, metabolic syndrome, and hemodialysis. However, three enigmas remain unsolved. First, a small amount of hydrogen has marked effects on rodents but not on cultured cells. Second, drinking hydrogen water is usually more effective than inhaling hydrogen gas, but should be able to bring a small amount of hydrogen to the human/rodent bodies. Third, humans and rodents produce a large amount of hydrogen gas in the large intestine, but an addition of a small amount of hydrogen exhibits prominent effects. Further studies are required to elucidate the molecular bases of hydrogen effects and to prove therapeutic and preventive effects of hydrogen on various human diseases.

Key Words
●分子状水素 ●酸化ストレス病態 ●炎症病態 ●抗酸化作用

はじめに

 2007年6月に日本医科大学のOhsawaらが,水素ガスの脳梗塞モデルラットに対する顕著な効果を報告した1)。Ohsawaらは,水素が水酸化ラジカル(hydroxyl radical,・OH)を特異的に消去し,効果は弱いながらも過酸化亜硝酸(peroxinitrite,ONOO-)も消去することを示し,水素の選択的なラジカルスカベンジ作用が顕著な効果の分子基盤である可能性を示した。また,細胞培養実験にて水素が酸化ストレスによる細胞死を抑制することを実証している。
 この研究に引き続き,本稿執筆時(2011年5月)までに合計47種類のモデル動物実験系,3種類のヒト疾患,4種類の細胞培養実験系の合計54種類の実験系における水素の有用性が報告されてきている(表1)。

この2ヵ月間に新たに9種類の実験系における水素効果が報告をされており,水素が有効である病態モデル系を網羅的に集計することが事実上不可能になりつつある。一方,水素が有効な疾患はほぼ出尽くしており,疾患数は飽和状態に達しつつある。最近は,水素ガスや水素水飲用で効果が認められた疾患に水素化生理食塩水の腹腔内投与を行ったり,同一疾患の異なった病態モデルを作成することにより水素効果を検証する,クオリティーが低い論文が一部の研究室で量産されている。しかし同時に,水素効果の分子機構に迫る論文も発表され続けており,研究の裾野の広がりを示している。
 本稿においては,筆者らが行ってきたパーキンソン病研究とⅠ型アレルギー研究のレビューをするとともに,ヒトに対して行われた3つの研究成果を紹介する。さらに,水素効果の分子機構を考える上で未解決の3つのミステリーを紹介する。

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