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アディポネクチンとアンチエイジング

8 アディポネクチンと寿命―アディポネクチン高発現トランスジェニックマウスの作製とその解析結果から―

The Association between Adiponectin and Longevity ; Based on the Analysis of the Transgenic Mice Lines expressed Human Adiponectin Gene

小田辺修一

アンチ・エイジング医学 Vol.7 No.3, 53-57, 2011

Summary
 Adiponectin, a physiologically active polypeptide secreted by adipocytes which exists abundantly in serum, shows insulin-sensitizing, anti-inflammatory and anti-atherogenic properties in rodents and humans. To find out the new effects of adiponectin in vivo, the model animal with hyperadiponectinemia has been needed. We fortunately succeeded to produce three lines of transgenic mice expressing human adiponectin in the liver. Two lines of these mice of had serum human adiponectin levels 20 times higher than normal human and exhibited 30 times higher serum levels of high molecular weight (HMW). We reported that these mice with hyperadiponectinemia had long life-span. Especially, the longevity effect of adiponectin under a high calorie chow was more remarkable than under a regular chow. Calorie restriction has only been established as a way of longevity in all species. If the fact that detailed functions of adiponectin lead to longevity will be identified, the development of calorie restriction mimetic or exercise mimetic might become possible.

Key Words
●アディポネクチン ●トランスジェニックマウス ●寿命 ●カロリー制限模倣薬

はじめに

 肥満や過体重がエイジングを加速させるかと尋ねられれば,その返答は難しい。しかし,カロリー制限が個体の寿命を延長させることは周知の事実である。
 しかし現実には,飽食やモータリゼーション化による肥満症,過体重やそれに伴ったメタボリックシンドロームを病んでいる者も少なくはない。カロリー制限とは逆の現象である,肥満に伴うメタボリックシンドロームの増加のため,日本人の平均寿命短命化といった状況に陥る可能性も危惧されている。肥満や過体重に伴い,その内臓脂肪からの分泌が低下するアディポネクチンと寿命との関係に注目してきた。私たちは幸運にも,数系統の高濃度のアディポネクチン血症を有するトランスジェニックマウスの作製と,その継代に成功した。その結果,高アディポネクチン血症が与える個体の寿命への影響を観察することが可能になった。高アディポネクチンを保つことが寿命を延長させる可能性を証明することができたので,ここに報告する。

高アディポネクチン血症トランスジェニックマウスの作製の困難性とその成功

 脂肪細胞から特異的に分泌される生理活性物質であるアディポネクチンは,ヒトの場合,その正常血中濃度は5~15μg/mLであり,他の一般的なホルモン濃度の1,000倍以上で存在する。つまり,血清中のタンパク質全体の0.01~0.03%を占めるほど,血中に高濃度かつ多量に存在している1)。中性脂肪の過剰蓄積がない小型の脂肪細胞から,より多く分泌される善玉アディポサイトカインであるアディポネクチンの生態内での作用をより明確にするために,アディポネクチン高発現トランスジェニックマウスが必要と考えられていた。しかし,前述のようにアディポネクチンは桁違いの高濃度で血中に存在し,①たとえ遺伝子導入しても,血中濃度を上昇できるほどの過剰発現は不可能と考えられていた点。②アディポネクチンの合成と分泌は脂肪細胞に特異的であり,脂肪組織以外の臓器にアディポネクチンを発現させることができたとしても,その臓器が分泌機能を有するかどうか不明な点。③血中濃度を多少上昇させても,元来有するマウスの脂肪細胞由来のアディポネクチンと区別できない可能性がある点。④アディポネクチンは通常血中において多量体を形成し,低分子量(3量体相当),中分子量(6量体相当),高分子量アディポネクチン(12~18量体に相当)で存在している。その多量体の中でも,高分子量アディポネクチンが最も生理活性を有していると考えられているが,遺伝子導入により過剰発現させたアディポネクチンが血中内で多量体を形成するか不明な点。⑤トランスジェニックマウスが1系統しかできなければ,そのマウスの表現型が高アディポネクチンによるものか,遺伝子挿入箇所の遺伝子機能異常による結果か不明な場合があり,最低2系統以上のアディポネクチン高発現マウスが必要になる点。⑥アディポネクチンの代謝系が不明な点など,それらの困難性から高アディポネクチン血症を有するトランスジェニックマウスの作製は不可能と考えられていた。
 私たちは,ヒトアディポネクチン全長遺伝子をマウスの肝臓特異的に高発現するトランスジェニックマウスの作製を試みた。幸運にも,複数の高アディポネクチン血症を有するマウスの系統を確立することに成功した(図1A)。

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