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アディポネクチンとアンチエイジング

3 アディポネクチンと動脈硬化,臓器障害

Effect of Adiponectin on Atherosclerosis and Organ Damage

平田歩船橋徹

アンチ・エイジング医学 Vol.7 No.3, 27-33, 2011

Summary
 Incidence of atherosclerotic diseases such as ischemic heart disease and cerebrovascular disease has been on the rise in Japan because of visceral fat accumulation resulted from the westernized dietary habit, insufficient exercise. Visceral fat accumulation causes excessive oxidative stress in accumulated fat. Oxidative stress induces adipocyte dysfunction, and the dysfunction results in adipocytokine dysregulation, such as increased inflammatory cytokines and decreasing plasma adiponectin concentration. Increased inflammatory cytokines and impaired plasma adiponectin brings on insulin resistance, elevated systolic blood pressure, and disorder of lipoprotein profile. Then, accumulation of these risk factors cause atherosclerosis. Oxidative stress and inflammatory cytokines also result in derangement in many organs, such as myocardial fibrosis and glomerular injury. Therefore, augmenting adiponectin will achieve anti-aging effect. Reducing visceral fat could be useful in increasing adiponectin concentrations.

Key Words
●内臓脂肪蓄積 ●酸化ストレス ●粥状動脈硬化 ●心筋障害 ●糸球体過負荷

はじめに

 現代社会では,車文化やインターネットの発展,西洋食の増加による相対的なエネルギー消費の低下から,内臓脂肪が蓄積し,インスリン抵抗性,血圧上昇,リポ蛋白異常が同一人に集積して動脈硬化性疾患に至る病態が,特に働き盛りの男性で問題となっている。これを解決することがアンチエイジングにつながる。この病態は単に体重が重いというだけでなく,脂肪細胞の機能異常によりアディポサイトカインや脂肪組織酸化ストレスなどを介して全身,特に心臓,腎臓,血管などの臓器の酸化ストレス蓄積が一因となる線維化や機能障害に結び付いていることが明らかになってきた。本稿では,動脈硬化および臓器障害,特に心機能障害,腎機能障害に対するアディポネクチンの重要性について,臨床データおよび報告されている分子メカニズムを交えて概説する。

アディポネクチンと動脈硬化

 近年の生活習慣の変化に伴い,耐糖能異常,脂質異常,血圧高値が同一人に重複する「マルチプルリスクファクター症候群」が,心血管疾患や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の強い危険因子となることが明らかになっている。その上流には内臓脂肪蓄積およびインスリン抵抗性を基盤とする種々のアディポサイトカイン異常が原因となることが報告されており,メタボリックシンドロームという概念が提唱されている。内臓脂肪は単にエネルギーを貯留するだけではなく,さまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌する臓器である。
 我々は,内臓脂肪蓄積により脂肪組織酸化ストレス(fat reactive oxygen species:fat ROS)の活性化が起こり,この酸化ストレスがアディポサイトカイン分泌異常を引き起こすことを報告した1)。アディポサイトカイン分泌異常は血管および全身の炎症,代謝異常を引き起こすことがわかってきている。なかでもアディポネクチンは,動脈硬化性疾患の発症との関連が深いアディポサイトカインであり,メタボリックシンドロームと動脈硬化をつなぐ鍵分子として注目されている。
 冠動脈疾患患者の血中アディポネクチン濃度は,性別とBMIを一致させた健常対照群に対して有意に低値を示した(図1A) 2)。

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