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対談(皮膚アレルギーフロンティア)

テーマ「カセリサイディンLL-37の真の役割は?」

山﨑研志森実真

皮膚アレルギーフロンティア Vol.18 No.3, 34-41, 2020

森実 本日は,ヒトの抗菌ペプチドであるカセリサイディン(cathelicidin)ペプチドLL-37について,東北大学の山﨑研志先生とともに,その真の役割をわかりやすく解説してみたいと思います.抗菌ペプチドとは,10~50個程度のアミノ酸からなる,幅広い抗菌活性を有するペプチドを言い,現在では1,000種ほど発見・報告されています.そのなかで最も詳細に研究されているもののひとつがカセリサイディンであり,ヒトのカセリサイディンがLL-37です.山﨑先生,まずはカセリサイディンの歴史からご紹介いただけますか.
山﨑 1989年に,最初のカセリサイディンであるPR-39が,ブタから見つかりました1).カセリサイディンとは,カテプシン(cathepsin)に構造の似たシステインプロテアーゼのインヒビター(inhibitor)“Cathelin”という意味で後に付けられた名称で,PR-39はプロリンとアルギニンから始まり39個のアミノ酸で構成されているという意味です.カセリサイディンは,N末端側の大部分をカセリンドメインという共通モチーフが占めており,C末端側がブタのPR-39やヒトのLL-37など,種によってバラエティに富む構造をもっています.LL-37は,ロイシン-ロイシンで始まり,アミノ酸の数が37個の抗菌ペプチドです.
森実 カセリサイディン研究においては,山﨑先生と私が同時期に師事していた,米カリフォルニア大学サンディエゴ校のRichard Gallo教授が,多大な貢献をしていますね.
山﨑 Gallo先生は細胞外マトリックスのひとつであるシンデカンを線維芽細胞から誘導する因子を探っていたのですが,1994年にブタでの実験でPR-39がシンデカンの誘導因子であることを見出しました2).1995年には,ヒトのカセリサイディン分子としてCAP18(18kDaのcathelicidin antimicrobial peptide)がクローニングされ,そこから“cathelicidin”という名称が公式に使われるようになります3,4).1997年にはマウスでカセリサイディンをクローニングし5),2001年にCRAMP遺伝子のノックアウトマウスを作製して,A群溶血性レンサ球菌を皮膚に播種したところ,病巣が大きくなったことを“Nature”に報告しました6).単一の遺伝子の欠損で感染症が増長されることを示し,生体内での抗菌ペプチド活性を初めて確認した,きわめてインパクトのある論文でした.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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