「Summary」白癬は,ヒトの真菌症のなかで最も患者数が多く,感染の規模は全世界に及ぶ.本症起因菌である白癬菌は,[表皮,毛髪,爪との接触・付着→組織への定着・定植→内部への侵入→深部への侵入]という順序で感染を進めていく.感染プロセスの各過程で,白癬菌は酵素類や二次代謝産物などを産生・分泌し,宿主組織を破壊する一方,宿主の生体防御機構を巧みにかわす術を発達させ,感染の効率化に役立てている.これに対し,宿主は物理的・化学的防御機構に加え,細胞性免疫を中心とする免疫学的防御機構を駆使し,菌の侵入に対抗している.したがって,白癬の臨床症状は,菌の侵入によって宿主組織にもたらされる影響と,菌の侵入に応答して宿主が起こす多面的な生体防御機構の双方に起因したものといえる.
「KEY WORDS」免疫応答回避能,ケラチノサイト,パターン認識受容体,炎症性サイトカイン,抗菌ペプチド
「KEY WORDS」免疫応答回避能,ケラチノサイト,パターン認識受容体,炎症性サイトカイン,抗菌ペプチド