EBD(根拠に基づく皮膚疾患診療)
アトピー性皮膚炎と心身医学療法
皮膚アレルギーフロンティア Vol.9 No.3, 60-62, 2011
アトピー性皮膚炎(AD)の心身医学療法は,それを施行している医師が少ないためにエビデンスは比較的少ない.とくに薬物療法のエビデンスが少ない.一方,心理療法に関してはある程度有用なエビデンスがある.ただし心理療法はエビデンスがあっても実際には使いにくいこともある.
アトピー性皮膚炎の心身医学療法
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は心身症的な側面の強い皮膚疾患であることは広く認識されるようになってきた.しかし,その治療法に関してはまだ普及していない.それは治療法が皮膚科医にとっては特殊であることが大きな理由のひとつであると思われる.そのほかには時間的な問題,採算の問題もあると思われる.このような理由で,実際に施行されている医療機関は限られている.そのためエビデンスとなる臨床研究も少ない.心理療法ではある程度の報告がなされているが,向精神薬を使った治療に関してのエビデンスはきわめて少ない.これはADの心身症に対して向精神薬で適応をとろうという製薬会社がまずないので,いわゆる治験などはなされていないのが大きな点であると思われる.また,向精神薬を使っている皮膚科医が世界的にきわめて少ないために臨床研究もほとんどなされていないと思われる.
2003~2009年9月までの英語と日本語の文献検索によると,ADにおいて心身医学療法に関する論文は20件であった.その内訳は表1のようになる.

メタ分析は2件あるが,ランダム化試験(RCT)は0件である.比較研究が4件で,単群の研究が7件,症例報告も7件である.
心理療法のメタ分析
メタ分析ではChidaらによる報告がある1).1986~2006年のあいだでADの心理介入に関するものを検索したところ,8件の研究がみられた.心理療法の内容は,アロマテラピー,自律訓練法,短期力動精神療法,認知行動療法,皮膚科的教育および認知行動療法,ハビットリバーサル,ストレスマネージメント,構造化教育などであった(一部の心理療法は同一の論文で重複あり).これら8件のうち,自律訓練法,認知行動療法,皮膚科的教育および認知行動療法,ハビットリバーサル,構造化教育の5件では皮膚症状の有意な改善がみられたが,残りの3件であるアロマテラピー,短期力動精神療法,ストレスマネージメントでは有意差はみられなかった.かゆみについては自律訓練法,認知行動療法,皮膚科的教育および認知行動療法,ストレスマネージメントの4件で有意に減少していたが,ハビットリバーサルでは有意差がなかった.搔破については記載の自律訓練法,認知行動療法,皮膚科的教育および認知行動療法,ハビットリバーサルの4件で改善していた.心理状態はハビットリバーサル,ストレスマネージメント,構造化教育の3件の心理療法で社会不安,QOL,コーピングスキル,苛立ち,破滅感,かゆみのコーピングにおいて改善していた.これらから,アロマテラピー以外はなんらかの要素で改善がみられていた.このような心理的介入は有用であるが,どの心理療法がより有用かはさらなるデータが必要である.
Ersserらの報告は,小児ADの心理療法で心理教育に関するものであった2).医学文献のデータベースではRCTは0件であったが,多数のデータベースから引用しているために5件のRCTが報告されているとしている.そのうち4件は両親に対する介入で,残りの1件は患児に対するリラクゼーションであった.両親への介入の4件のうち3件の報告で介入群の皮膚の重症度が改善していた.しかしこのメタ分析では,研究デザインが異なるためにデータの結合ができず,有用であるとまでは結論づけをしていない.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。