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アレルギーをめぐるトレンド

二光子励起レーザー顕微鏡

Two-photon excitation microscopy

江川形平椛島健治

皮膚アレルギーフロンティア Vol.9 No.3, 56-58, 2011

 二光子励起レーザー顕微鏡は,その深部到達性,低侵襲性から生体イメージングと相性が良い.生きた組織をそのまま用いての血管・リンパ管の観察や,皮膚に浸潤した免疫細胞の動態イメージングも可能となっている.

 二光子励起レーザー顕微鏡は,物質励起に二光子励起過程を利用した顕微鏡である.ある原子に光が当たると,原子核の周りを回っている電子がその光子のエネルギーを吸収し,電子状態が最も安定な状態(基底状態)からエネルギーの高い状態(励起状態)へと移行する.これが普通に起こる一光子励起であるが,光子密度が非常に高い状況では,2つの光子が同時に吸収される現象(二光子吸収)が確率的に生じ,電子の励起が起きる.すなわち,一光子励起のときの半分のエネルギー(2倍の波長)をもつ光子で同じ励起を起こすことが可能となる.これが二光子励起である(図1).

二光子励起レーザー顕微鏡の特徴

 二光子励起レーザー顕微鏡の特徴を以下に記す.

1.深部到達性

 上述のように,二光子励起レーザー顕微鏡で用いられる励起光は従来の蛍光顕微鏡に用いられてきたものの2倍の波長となる.蛍光顕微鏡の励起光源として古くから用いられてきた水銀灯は365,405,436nmにピークをもつ波長分布スペクトルを示すが,二光子励起レーザー顕微鏡における励起ではこれらの約2倍,すなわち800~1,000nmの波長のレーザーが用いられる.波長が長いことにより従来の光源に比べ深部到達性に優れ,かつ,光毒性(phototoxicity)も低い.このため,組織表面から数百μmといった深部の顕微鏡像を少ない侵襲で取得することができる.実際,われわれはおもに皮膚を観察しているが,およそ300~400μmの深度の構造物まで励起が可能であり,これはマウスでは皮膚表面から皮下脂肪組織まで十分にカバーできる深達度である(図2).

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