ADモデル
ハプテン誘導 AD マウスモデル:薬効評価;タクロリムス外用薬と瘙痒抑制
Topical application of tacrolimus and its anti-itch property
皮膚アレルギーフロンティア Vol.9 No.1, 13-17, 2011
要 約
マウス皮膚へハプテンを反復塗布すると,血中IgEの上昇を伴った皮膚炎が誘発される.炎症部位ではTh2サイトカインの発現,炎症細胞の浸潤が認められ,ハプテン塗布後には高頻度の搔破行動が誘発される.タクロリムスを皮膚炎誘発部位へ局所適用すると,皮膚炎の抑制とともに搔破行動が強く抑制される.一方,同様に適用したデキサメタゾンは皮膚炎をきわめて強く抑制し,好酸球浸潤をほぼ完全に抑制するが,搔破行動には抑制作用を示さない.タクロリムスの搔破行動抑制作用には表皮内への神経線維伸長の抑制,皮膚サブスタンスP作用の減弱などがかかわっていると推定される.
KEY WORDS
ハプテン/搔破行動/タクロリムス/ステロイド/マウスアトピー性皮膚炎モデル
ハプテン
特異抗体と結合するが,単独で免疫応答を誘発することができない低分子化合物.完全抗原として免疫応答を誘発するためには蛋白などとの複合体を形成することが必要である.
タクロリムス
放線菌代謝産物由来のマクロライド構造をもつ抗生物質.カルシニューリンの阻害を介して転写因子NF-ATの核内移行を抑制し,T細胞のサイトカイン産生を抑制する.
はじめに
かゆみとは皮膚および粘膜で知覚される特殊な感覚であり,搔破衝動を誘発する.アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)などのアレルギー性皮膚疾患は強いかゆみを伴い,誘発される搔破行動が皮膚バリアを破壊し,皮膚症状を増悪する.また,外来刺激の侵入を容易にしてかゆみ誘発を助長する.強いかゆみは患者QOLを著しく損ない,日常生活にも大きな支障をきたすため,かゆみを制御することは,皮膚症状の増悪を防止するとともに患者QOLを改善するうえできわめて重要である.
かゆみは曖昧な感覚であり,ヒトにおいても定量的に評価することは困難であるが,誘発される搔破行動はかゆみ評価の指標として有用である.一方,実験動物を用いる基礎研究では搔破行動は唯一の指標である.
1999年にAD治療に外用剤として適応となった免疫抑制薬タクロリムスは,中程度の強度を示すステロイド外用剤に匹敵する抗炎症効果を発揮するとされるが,臨床ではかゆみに対する抑制効果も確認されている.
本稿では,ハプテン反復塗布によって誘発するマウスADモデルおよびハプテン塗布によって出現する搔破行動に及ぼすタクロリムスの抑制効果について紹介する.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。