関節リウマチ(RA)の活動性評価およびアウトカム評価のなかで,最も客観的で治療目標としても優れているのが,関節破壊の画像評価である.現在のゴールド・スタンダードは単純X線によるもので,古くからSteinbrocker分類が用いられ,また,個々の関節に関してはLarsen分類が広く使用されてきた.しかし,その後の治療戦略の進歩に大きく貢献したのはSharp法であり,van der Heijde modified Sharp(vdH-Sharp)法であることは言うまでもない.わが国においても,最新画像評価を用いて治療効果判定を行った臨床研究が報告されてきた.治験では,SAMURAI試験で,vdH-Sharp法による日本人RAのグループレベルでの変化が初めて示された.そのインパクトはきわめて大きく,その後の多くの臨床研究でvdH-Sharp法による関節破壊評価が取り入れられた.そのなかで,この評価法の読影者間でのバラツキ,読影の際のルールなど,論文からでは読み取れない情報も多いことが指摘され,それらの情報は手法の開発者たるvan der Heijde教授から直接ご教示いただくのがベストであろうとの認識が高まった.


 産業医科大学第一内科田中良哉教授のお声がけによって,そのような貴重な機会が実現したのは,平成22年9月のことであった.日本の5大学から総勢25人のリウマチ医がライデン大学メディカルセンターにうかがい(写真1),3日間にわたって直接,患者画像を見ながらvan der Hijde教授ご自身による指導を受けたのである(写真2,3).








 まず,この評価法の基礎的講義を受けた(写真2).ここで,理論的背景,グループレベルでの評価法の課題や克服法を学んだ.次に3人ごとの小グループに別れ,実際の患者関節X線によるスコアリングと,それに対する評価が行われた(写真4).




このグループは,ライデン研修での成果を受け,その後,数ヵ月に1回のペースで読影ルールの確認を行い,グループ間での読影のバラツキを最小限にする研修を続け,現在に至っている.

 これらの活動を通じて,わが国における研究者主導の臨床研究における関節破壊評価が,より高いレベルで,そしてオリジナルルールに従って行われ,世界的にも評価される研究へと進んでいくことが期待される.

 今後,この活動をより広く進めるためには,まず第一歩として,ライデン研修参加者を中心にそれを正しく,より多くのリウマチ医に広めていく研修機会を設ける必要がある.次に,それに引き続いて,受講者に対して個々の読影スキルを研鑽し続け,評価法の統一性を保つべく,定期的なフォローアップ研修を行っていく必要がある.この講習修了者が,次の講師となって研修機会を設け,それを何段階かで進めることによって,より広い受講者を確保することが可能と思われる.

 このような活動は,わが国におけるRAの関節破壊の実態,患者QOLの分析,治療法の評価を行う際に必須であり,常に世界の中での日本の立ち位置を客観的に検証し自己評価するために欠かせないと考える.これを契機にしてvdH-Sharp法の理解が深まれば,これを日常診療に用いることも夢ではない.患者QOLを最大限に高めるために,画像評価のゴールド・スタンダードである関節単純X線撮影というモダリティーを最大限に活かすことを,今,真剣に考えなければならない.


慶應義塾大学医学部リウマチ内科教授

竹内 勤 Takeuchi Tsutomu