<< 一覧に戻る

欧州リウマチ学会議(EULAR)

欧州リウマチ学会議(EULAR)2011

南木敏宏

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.9 No.3, 62-63, 2011

 2011年5月25日~28日まで,英国のロンドンにて欧州リウマチ学会(EULAR Annual European Congress of Rheumatology)が開催されました.ロンドンは1ヵ月前にウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式が行われたばかりであり,街には結婚記念グッズがまだ売られ,式場のウェストミンスター寺院には観光客が多数訪れていました.また学会期間中にサッカーの欧州チャンピオンズリーグの決勝戦がロンドンで行われたため,その日の夜,繁華街には多くのサッカーファンがあふれていました.

 さて,今年のEULARは,約100ヵ国,15,000人の参加が見込まれ,演題数は約2,200(口演300,ポスター1,600,招待講演300)と,非常に盛況な学会でした.私は米国リウマチ学会(American College of Rheumatology;ACR)にはこれまで参加していたのですが,EULARは初めてで,「どんな感じだろうか」,「違いはあるのだろうか」,と期待しての初参加でした.
 学会の形式は,1日500演題に及ぶポスター発表と,18もの会場で並行して進められる口頭の演題発表でした.ACRと形式は似ていましたが,EULARは朝の早い時間と夕方17時以降は製薬企業などによるサテライトシンポジウムである点が,ACRとは違っていました.

 「今年の大きなトピックスは何だった?」とよく聞かれるのですが,一昨年,昨年は,関節リウマチ(arthritis rheumatoid;RA)の新診断基準,RAの寛解の新しい基準,と大きなトピックスがありましたが,今年はそれに匹敵するようなものはなかったと思います.「何せそれらは何十年に一度の大変更なので,そう毎年はないよ」とEULARに毎年参加している知り合いの先生の談でもありました.
 全体としての印象は,やはり生物学的製剤関連の内容が非常に多かったことです.TNF阻害剤をはじめとする生物学的製剤のRAに対する臨床効果,長期安全性,およびまだ日本では発売されていない製剤の報告も多数みられました.近年は効果や安全性の解析だけではなく,その先のバイオフリー(生物学的製剤の投与を中止できる)の可能性が検討されてきていますが,アダリムマブでのバイオフリーの報告も今年はありました.TNF阻害剤はRAに用いる際にはメトトレキサートとの併用がより有効と報告されていますが,トシリズマブではメトトレキサートと併用でも単独投与でもその有効性に差はないことが報告されていました.これからは,生物学的製剤が有効であることだけではなく,各生物学的製剤の特徴,有効性や安全性の違いなどを積極的に検討することが必要と感じました.
 また,生物学的製剤関連では,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)における報告もありました.リツキシマブ(抗CD20抗体)の有効性はかなり以前より報告されていますが,ベリムマブ(抗BLyS抗体),抗インターフェロンα抗体の有用性も報告されていました.SLEに対して,抗BLyS抗体はすでに米国で承認されています.日本においても,臨床試験が進み治療薬として用いられるようになることが期待されます.SLEに対して,CD20, CD22も加えたB細胞やインターフェロンをターゲットとした生物学的製剤による治療が一般的に行われるようになるのもそう遠い先ではないかもしれません.
 生物学的製剤以外では,JAK阻害剤,Syk阻害剤,S1P阻害剤などによるRAへの有効性が報告されていました.とくにJAK阻害剤は臨床試験も進んでおり,生物学的製剤と同程度の効果も期待されています.経口薬で生物学的製剤と同等の効果が得られるのであれば,大きな治療の進歩となることと思いました.
 基礎研究的なセッションとしては,新しい治療ターゲットとして,線維芽細胞,マクロファージ,リンパ球,マスト細胞などを挙げて,それぞれにおいてターゲット分子が検討されていました.抗IL―17抗体がRAに有効であることが報告されていますが,マスト細胞は炎症滑膜でIL―17を産生しており,滑膜での炎症に関与している可能性があります.また,ケモカイン受容体に関して,CCR2, CCR5は臨床試験で無効であったが,CCR1は有用である可能性があり,現在臨床試験が行われています.これに関して,RA患者の関節液を用いた細胞遊走にCCR2, CCR5阻害剤は効果がないが,CCR1阻害剤は抑制効果があることから,こういった基礎的な研究が臨床での治療の有効性を予測することにつながることも討論されていました.基礎的な研究がさらなる治療開発に結びつくことが期待されます.
 生物学的製剤のジェネリック製剤に関するセッションがありました.生物学的製剤は非常に有用ですが,高価であることは大きな問題です.日本においてでも金銭的理由で投与できない患者さんが多くいます.世界に目を向けると,発展途上国などで用いることは非常に難しいだろうと思います.それを解決できるひとつの方法が生物学的製剤のジェネリック製剤です.しかしながら,製薬企業が生物学的製剤の製造法に関して詳細には明らかにしていないのが現状のため,まったく同一の物を作ることは困難であり,安全性が懸念されると結論づけられていました.

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る