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施設紹介

宇多津浜クリニック

猪尾昌之

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.9 No.3, 48-51, 2011

―宇多津浜クリニックの沿革および特徴についてお聞かせください.
 宇多津浜クリニックは,関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)や膠原病などリウマチ性疾患を中心とした専門施設です.香川医科大学第一内科時代から,師匠である倉田典之先生の元で診療してきた医師たちが,リウマチ性疾患に対してもう少し臨床を中心に取り組みたいという思いから,腎臓疾患を専門とする宇多津クリニックの隣りに,リウマチ性疾患の専門クリニックとして,平成15年6月に宇多津浜クリニックを開院しました.また同時期に高松市内にもクリニックを開設し,宇多津浜クリニックまで通院が困難な患者さんを中心に診療しています.

 宇多津浜クリニックは,できる限り当院だけで患者さんの抱えるすべての疾患に対応できる診療・治療を行うことを目指していますので,リウマチ性疾患の治療を行うだけでなく,糖尿病,高血圧,脂質異常症などの生活習慣病や,骨粗鬆症などの合併症の治療も行っています.病床数は19床で,現在,内科,リウマチ科,消化器科,外科,整形外科,リハビリテーション科,心療内科を標榜しています.
 われわれは医師一人で医療を行うのではなく,各部署のスタッフが専門性を活かしたチーム医療ができるように努力しています.常勤医としては内科医はリウマチ専門医である私と副院長の大西郁子先生の2名,整形外科医と消化器外科医は各1名ですが,整形外科医もリウマチ専門医であり,人工関節手術を院内で実施できる体制を整えています.非常勤としては肝臓,循環器,血液,心療内科の専門医が定期的に外来診療を行っています.そして薬剤師,看護師,栄養士,理学療法士,臨床検査部,医事課などのスタッフとも協力体制をとっています.また,臨床検査部は超音波検査を担当しており,血液検査も院内でできるようにしています.
 大学の関連病院にもなっており,連携をとりながら臨床研究も行っていますし,日本リウマチ学会などの学会活動も積極的に行っています.

―RA診療において,どのようなことに力を入れていらっしゃいますか.
 疼痛は患者さん自身にしかわかりませんので,診察では患者さんの訴えに耳を傾けることが大切だと考えています.もちろんそのすべてを受け止めることはできないとは思いますが,できる限り親身になって受け止め,整理して客観的に把握するようにしています.
 また検査としては,通常の血液検査はもとより,画像的な評価を重視しています.とくに最近は超音波検査を積極的に行っています.診断においては,疾患活動性としては疼痛や腫脹などの関節症状は基本であり,加えて症状発現からの期間も重視しています.
―中国・四国地方におけるRA患者さんの特徴などがございましたらお聞かせください.
 患者さんは香川県だけでなく,徳島県,愛媛県,岡山県などからも来られます.
 RAは女性に多く,発病は中年以降という特徴がありますが,地方では農作業に従事している方が多く,RAのために痛みがあっても見た目は元気なものですから,とくに農家に嫁いだ女性の方では,我慢して頑張り過ぎて手指の変形がかなり進行している方も結構いらっしゃいます.そして調子がよくなると,また一生懸命農作業をして痛みが強くなってしまうなど,都会ではなかなかみられない状況があります.
 患者さんは非専門の先生方からの紹介で来られることも多いですが,口コミも多く,周囲の方に勧められ直接当クリニックを受診するという方も増えてきています.ですから,患者さんの重症度や発症からの期間もさまざまです.情報社会ですが,治療が十分になされていない患者さんもかなりいます.これはこの地域というよりは,地方ならではの特色のひとつかもしれません.
―生物学的製剤の導入により実際の臨床現場で起こったRA治療のパラダイムシフトについて教えてください.
 生物学的製剤の登場前から,われわれはRAに対してかなり積極的に薬物治療を行ってきました.メトトレキサート(MTX)は保険適応となる前から導入しており,患者さんの同意を得て早期投与を試み,投与量も以前から最高15mg/週まで使用していました.それでも関節変形が進行し,徐々に日常生活が制限されてしまうという実情を経験し,RAの薬物療法の限界と空しさも感じていました.
 ですから,われわれは生物学的製剤も早くから導入しました.生物学的製剤により関節破壊の抑制効果が期待できますし,寛解を目標とした治療戦略が構築できるようになりました.素晴らしい時代が訪れたと思います.しかも使用可能な生物学的製剤の種類が増え,それぞれ投与方法や投与間隔などに特徴があることから,患者さんの生活に応じた製剤が選択できます.そのなかでも,とくにアダリムマブはMTXと併用することで寛解を目指せるヒト型のTNF阻害薬です.また,自己注射も可能な製剤であり,若い患者さんや仕事・家事などで忙しい患者さんにアダリムマブを選択しています.
―関節エコーを導入されたきっかけについてお聞かせください.
 患者さんの姿勢の維持,再現性,費用などの面から,もともとMRIに限界を感じていました.一方,関節エコーはその時々の関節の状況がダイナミックに評価できるので,興味をもっていました.日本リウマチ学会ではまだ関節エコーはあまり強調されてはいませんでしたが,海外ではエコーを撮ることが多いと聞いていましたので,早期診断,早期治療を考えたときに,関節エコーのほうがわかりやすく,これからはエコーではないかと思いました.そういった状況のなか,札幌の時計台記念病院の評判を聞きましたので,時計台記念病院に直接うかがい,谷村一秀先生(現 北海道内科リウマチ科病院)に当クリニックのスタッフの研修をお願いしました.それが3,4年前です.現在は大西先生が中心となり,4名の技師とともに切磋琢磨して,関節エコーの感度・精度を上げています.
―関節エコーの優れている点と現時点での課題についてご教示ください.
 滑膜の状態や滑膜の肥厚などを把握することができますので,早期RAや非典型的なRAの診断に有用です.また関節エコーにおける滑膜炎の消失は,治療目標として有用と考えられています.当クリニックでも定期的に関節エコーで確認し,それによって治療の終了や継続,あるいは治療方針の変更を判断する参考にしています.とくに生物学的製剤の効果判定に有用ですから,生物学的製剤の導入前には関節エコーを撮ることにしています.
 ただ,関節エコーによって多くの情報が得られますが,関節エコーの所見だけですべてを決定できるわけではなく,あくまでもアイテムのひとつであり,得られた情報を有効に活用するためには,経験と意味の熟知が必要となります.なお,香川県では残念ながら関節エコーの評価はまだ低く,社保や国保で認められていません.
 また関節エコーは小さい関節を観察するため,検査の再現性や,検者間の差の問題があり,評価方法の標準化も課題のひとつだと思います.当クリニックでは検者間の差をなくすために,必ず2人体制で撮り,できるだけ撮影方法を統一しています.そのために大西先生と技師は週に1回ミーティングを行っていますし,月に1回は担当医師と技師による症例検討会も開催しています.さらに日本リウマチ学会地方会の関節エコー講習会の指導に加わったりもしています.
―関節エコーの導入を検討されている先生方へのアドバイスがあれば,お聞かせいただけますでしょうか.
 関節エコー自体は患者さんの関節を丁寧に撮影しますから,時間がかかります.そのため,外来の合間に医師自身が関節エコーを行うことはなかなか厳しいと思います.医師が関節エコーの有用性を十分理解し,技師が撮像した結果を正しく評価できる体制を整えることで,関節リウマチ診療における関節エコーがより普及していくのではないかと思います.
―クリニックでのさまざまな取り組みについてお聞かせください.

 患者さんへの情報提供のひとつとして,膠原病新聞「膠っこ(にかわっこ)」を年に4回発行し,ホームページにも掲載しています.RAだけでなく,膠原病全体の情報について,医師,看護師,薬剤師,栄養士,理学療法士など各部門が持ち回りで記事を作成しています.また倉田先生が「膠原病,今と昔」というタイトルで連載もされています.
 定期的な患者さん向けの勉強会としては,本院に通院し始めて2年未満のRA患者さん,いわゆる初心者の方を対象に,テーマを決めた勉強会を年に4回開催しています.疾患,薬剤,合併症,リハビリテーションの方法などを,各部門のスタッフが協力して説明しています.
 さらに生物学的製剤に関する勉強会も年に1回行っています.対象は生物学的製剤をすでに導入された方や,興味のある方で,院内外から家族の方を含めて多数ご参加いただいています.
 われわれ自身も,チーム医療の充実化とレベルアップをしなければいけませんので,RA関係では毎月2回スタッフミーティングを行っています.症例検討に加え,各部門での問題点や,現在行っている治療の意義などの検討を通じて,知識や情報の共有を図っています.
―今後新しく取り組んでいきたいとお考えになっていることをお聞かせください.
 RA治療薬は今後も増えることが予想され,増えることによって混乱を招く可能性もありますので,その状況に対応するためにも,さらなるチーム医療の充実化を図りたいと思っています.しかもRAの患者数は増大していますから,医療サービスが低下しないように,診断,治療,評価の各段階におけるスタッフの体制づくりと,レベルアップにも取り組んでいきたいと思います.
 また,大学との連携はできていますが,地域の先生方との連携は十分ではありませんから,病診連携の構築が必要だと考えています.香川県はITによる全県的な医療連携「かがわ遠隔医療ネットワーク(K─MIX)」を設立しており,RAに関しても大学を中心とした連携づくりが進められていますので期待していますし,またもう少し小さなブロックごとの連携も築いていきたいと思っています.

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