<< 一覧に戻る

Orthopractice―私の治療法 人工肘関節の現状と問題点

DEBATE 1 国産人工肘関節

西田圭一郎

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.9 No.3, 12-19, 2011

 岡山大学式人工肘関節はアルミナ・セラミックとHDPの組み合わせの摺動部をもつ特徴を有するunlinked typeの人工肘関節であり,初期の京セラⅠ型から始まって約30年の経験を有する.基本コンセプトは軟部組織を極力温存,再建することで本来の弱い拘束性に対応し,滑車部をソリッドなセラミック性コンポーネントに置換して解剖学的な関節面の高さを再現することによって,より良好な可動域を目指すことである.術後合併症としての脱臼を回避するには,コンセプトを理解したうえでの正確な手術手技に加えて,高度の骨欠損や軟部組織による支持性が破綻したRA肘に対する適応を避け,linked typeの人工関節などで柔軟に対応する必要がある.

緒 言

 1970年のDeeらによる拘束型(蝶番型)に始まる人工肘関節置換術(TEA)の歴史は,拘束型TEAの失敗を経て,現在では一般に連結型(linked type)および非連結型(unlinked type)に分類される.前者の代表機種には米国のCoonrad/Morrey,スイスのGSBⅢがあり,これらの良好な長期成績をもとに,近年ではDiscovery®(BIOMET社),Solar®(Stryker社),Latitude®(Tornier社)なども開発されてきている.
 Unlinked typeはいわゆる表面置換型人工肘関節であり,欧州ではSouter-Strathclyde TEAが,米国ではCapitallocondylar TEAが代表的である.わが国でも1972年の工藤らによるKudo typeの先駆的な開発があり,1980年にはすでに良好な術後短期成績が報告されている1).以後,国産TEAはunlinked typeの開発が主流となり,DOH(道後温泉病院),NRE(日本大学),FINE(東邦大学),modular NSK(新潟瀬波),OUM(大阪大学式),K-NOW(慶應義塾大学)など多くの機種が現在使用されている.当教室の井上は,解剖体肘関節の形態計測結果から日本人肘に至適なサイズのTEAをデザインし,1982年からアルミナ・セラミックとHDPの組み合わせの摺動部をもつ表面置換型の京セラI型TEAの臨床応用を開始した2).当初はまったく表面のみを置換する形状であったため,経年的に人工関節の沈下をきたしたが,1986年にステム付きにデザインを変更し,さらにセメント固定を併用するようになって成績が安定した.さらに1997年からは上腕骨コンポーネントにチタン製ステムを有するJACE(J-alumina ceramic elbow)型人工関節(JMM社)へと発展した(図1)3).

1 TEAの一般的適応

 TEAは変形性関節症や高齢者の上腕骨遠位端粉砕骨折,上腕骨通顆骨折後の偽関節などに対しても成績は良好であるが,一般にはLarsen gradeⅣ以上の関節破壊を呈した関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)肘がおもな適応である.各種保存的治療にもかかわらず,①疼痛を伴う110度以下の屈曲拘縮 (painful stiffness),②疼痛を伴う不安定肘(painful instability),③不良肢位での強直肘(ankylosis, とくに両側例)が6ヵ月以上持続し,日常生活動作(activities of daily living;ADL)障害をきたしたものを手術適応とする.年齢は50歳以上が望ましいが,30歳代の比較的若年者でも著しいADL障害がある場合には適応としている.また,関節破壊がLarsen gradeⅢのものでも,上記①または②を満たし,比較的高齢者で,保存的治療に抵抗性のRA肘では手術適応とすることもある.後述するように,ムチランス型で骨欠損が大きいものや,靱帯機能が破綻して高度の不安定性を有するものでは一般にlinked type TEAの適応とする場合が多い.感染により抜去に至れば,肘関節機能は大きく損なわれるため,原則として感染の既往のあるものに適応しない.

2 治療の実際4)

1.手術体位
 患側上の側臥位とし,手術肘は架台に載せて90度屈曲位とする.

2.関節へのアプローチ
 後方縦切開で侵入,尺骨神経を十分剥離し,テープでよけておく.上腕三頭筋はCampbell法に準じて腱様部はコの字状に切開して肘頭付着部で翻転,深層の筋束は逆T字状に切開して肘頭から切離する.コの字を尺骨橈側に約10cm延長して伸筋群を外側によけて輪状靱帯を確認,切離後は黒糸をかけておく.続いて橈骨頭を切除する.関節内の炎症性滑膜はできる限り切除する.内側側副靱帯(MCL)を温存する点が手技上のポイントであるが,肘頭の先端を上腕三頭筋付着部で除去し,鉤状突起の骨棘を切除してもなお脱転が困難な場合は無理をせず,滑車の処置に移る.

3.人工関節の設置
 上腕骨軸に沿って刺入したK-ワイヤーに沿ってリーミング後,骨切り用のジグをあて,滑車部をトリミングする.この段階で肘頭尺側の視野が得られるため,MCLに沿って伸びる骨性spurを丁寧に切除すると完全な脱転が可能となる.次にトライアルの設置具合の確認を行う.尺骨側では,切除面の傾きに注意しながら予定した深さまで骨切除を行う.尺骨切痕のやや橈側からコンポーネントの設置方向にリーミング,ラスピングを行う.トライアルを設置してアライメント,安定性の確認を行う.多くの場合,尺骨側コンポーネントの回旋の不具合は滑車の回旋に合わせて調整する.セメントを注入し,各コンポーネントを軽く打ち込みながら設置後,整復してセメント硬化を待つ.

4.軟部組織の修復
 肘頭部にドリル孔を2箇所作成し,これを通してしっかりと上腕三頭筋筋束を縫着する.これに被せるように,翻転しておいた腱様部をしっかりと縫合する.輪状靱帯を修復し,吸引管を設置後,外側支帯を縫合する.尺骨神経に圧迫や緊張のないのを確かめ皮膚縫合を行う.弾力圧迫包帯固定,X線を確認後,肘関節を90度に固定して手術を終了する.

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る