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Orthopractice―私の治療法 関節リウマチへのメトトレキサート処方

DEBATE 3 肝炎ウイルスを含めた感染症とMTXの処方

中嶋京一三村俊英

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.9 No.1, 32-43, 2011

 MTXはRAにおける重要な治療薬であるが,感染症のリスクに留意して使用する必要がある.細菌感染症としては肺炎などの呼吸器感染症が頻度が高く,中等度から重症の場合,MTXは中止すべきである.HBVの再活性化対策としては,HBsAgのみならずHBcAb,HBsAbを測定し,ガイドラインに従ったスクリーニングと適切な対応が望まれる.PCPは予後不良の重症肺炎であり,MTXを中止しすみやかに治療を開始する必要がある.PCPはまた予防も大切であり,厚生労働省の予防基準を活用したST合剤の予防投与が望ましい.

緒言

 関節リウマチ(RA)患者において,メトトレキサート(methotrexate;MTX)の使用による感染リスクの上昇が以前から懸念されていた.MTXを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(disease-modifying anti-rheumatic drugs;DMARDs)や副腎皮質ステロイド(glucocorticoid;GC)の使用による感染リスクを検討した研究では,GCがリスクを上昇させることはほぼ共通した結果であった.一方MTXに関しては,リスクを上昇させるという結果と上昇させないという結果の,いずれの報告も認められている(表1)1).

たとえば13年間に感染症で外来または入院治療を要した609名を対象とした研究では,高齢,高疾患活動性(リウマトイド因子陽性,リウマトイド結節,関節外症状,赤沈上昇,身体機能低下),合併症(白血球減少,アルコール依存症,糖尿病,慢性肺疾患)により感染のリスクが上昇していたが,薬剤で上昇したのはGCのみ(ハザード比〔Hazard Ratio;HR〕1.56)でMTXではむしろ低下した(HR 0.96)2).7年間24,530名のRA患者と50万人の健常者における感染症による入院率を比較した研究では,GC(調整済み率比〔adjusted rate ratio;ARR〕1.92)および生物学的製剤(ARR 1.21)の使用により増加したが,MTX使用では低下(ARR 0.81)していた6).また7年間にわたり27,710名のRA患者における軽症(外来治療)および重症(入院治療)感染症のリスクを検討した研究では,MTXを含む免疫抑制薬の単独使用では軽症(ARR 0.9)および重症(ARR 0.92)いずれのリスクも上昇せず,GC使用にて上昇(軽症ARR 1.15,重症ARR 1.9)していた8).反対に,9年間24,282名のRA患者を対象とした研究では,MTX(ARR 3.4)とGC(ARR 2.4)いずれのリスクも上昇していた4).
 MTX使用群と非使用群を比較したコホート研究においても,MTXが感染症のリスクか否かについてはいずれの報告もみられる(表2).

60名のMTX使用例と61名の非使用例を比較した10年間の研究では,関節置換術後の感染症の頻度は使用例で8.7%,非使用例で5.5%と有意な差を認めなかった(p=0.366)9).一方,77名のMTX使用例と151名の非使用例とを比較した12ヵ月間の研究では,感染症の頻度が使用例で62%と非使用例の47%よりやや増加しており(p<0.05),おもな原因は気道および皮膚感染症であった10).さらに日和見感染症についても,ニューモシスチス肺炎を筆頭に種々の感染症(帯状疱疹,クリプトコッカス肺炎,ノカルジア症,サイトメガロウイルス肺炎,ヒストプラスマ症など)に関する症例報告がある(表3)13).

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