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Orthopractice―私の治療法 関節リウマチへのメトトレキサート処方

DEBATE 2 肺合併症患者への処方

川合眞一

Arthritis―運動器疾患と炎症― Vol.9 No.1, 24-30, 2011

 関節リウマチ(RA)におけるメトトレキサート(MTX)誘発性肺炎の危険因子は高齢者,糖尿病,既存の肺疾患,抗リウマチ薬使用歴,低アルブミン血症とされる.なかでも既存の肺疾患例では,MTXの必要度と肺疾患の重症度を考慮して慎重に投与を決定する.胸水ではMTXは禁忌である.軽症感染症はMTX継続可,中等度以上は休薬が原則である.リンパ増殖性疾患合併RAにはMTXは避けるべきだが,固形がんでは必要に応じて慎重投与も考慮する.

はじめに

 世界的に最も標準的な抗リウマチ薬とされているメトトレキサート(methotrexate;MTX)は,1948年に小児白血病に対して使用された悪性腫瘍治療薬である.1951年に米国で白血病に対する常用量を関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)に投与して有効とされたが,骨髄抑制などの強い副作用がみられたため抗リウマチ薬としての開発は一旦断念されたという歴史がある.1964年になって,乾癬に対して細胞増殖の周期に合わせた12時間ごとの低用量パルス療法が試みられ,1972年に同じ投与法でRAでも有効であることが確認された.その後,有用性を示す多くの臨床試験の報告が続いたため,米国では1988年に,改めて承認申請のための臨床試験をすることなくMTX低用量パルス療法が抗リウマチ薬として承認された.その後はわが国でも長年適応外使用されていたが,臨床試験で有用性が証明され,1999年に正式にRAへの適応が承認された1).
 MTXの承認用量については,承認当初より海外に比べて半分以下の8mg/週というきわめて低用量の上限用量しか認められていなかったが,適応外使用されていた時期にすでにそれを超える用量が投与されていた患者や,8mg/週では十分にコントロールできない患者に対する対応に,リウマチ専門医は苦慮していた.そのため,承認直後より日本リウマチ学会や日本リウマチ財団を中心として用量上限の増量を要望してきたが,適応症承認から12年経った2011年2月になって,ようやく16mg/週までの用量増加と第一選択薬とすることに関する公知申請が承認されるに至った2).しかし一方で,この決定は今後さらに多くの症例に対してより高用量が処方されるようになることを示しており,当然,種々のリスク増加が危惧される.
 こうした動きに呼応して,日本リウマチ学会ではMTX診療ガイドライン策定小委員会(鈴木康夫委員長)を立ち上げ,2010年9月に「関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン」を提唱した3).そのなかでも肺合併症患者に対するMTX投与は中心的なテーマとなっている.そこで本稿では,肺合併症を有したRA患者におけるMTXの処方につき,その注意点を最新の添付文書とガイドラインに基づいてまとめてみた.

1 MTX誘発性肺炎

 MTX使用開始2年後に間質性肺炎を合併した60歳代半ば女性RA患者の胸部単純X線写真(図1)およびCT写真(図2)を示した.

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