「Summary」慢性腎臓病(CKD)は,腎機能がある程度低下すると,その後は共通の機序(final common pathway)をたどって不可逆的に進行していく。近年,この経路において尿細管間質の慢性低酸素が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。低酸素に曝された細胞は,転写調節因子である低酸素誘導因子(HIF)を介してさまざまな防御反応を示す。また,低酸素はエピジェネティックな変化をもたらす。これら低酸素バイオロジーを理解することはCKDの病態解明につながり,ひいては新たな治療法開発の一助になるものと期待される。

「はじめに」慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)の基礎疾患は糖尿病,腎硬化症,慢性糸球体腎炎など多岐にわたるが,腎機能がある程度低下すると,その後は共通の機序(final common pathway)をたどって不可逆的に末期腎不全に進行していく1)。病理学的研究によって,腎臓病の予後は糸球体障害よりも尿細管障害とよく相関することが明らかとなり2)3),final common pathwayの主座は尿細管間質にあると考えられるようになった。