「Summary」肝中心静脈閉塞症(VOD)は,移植前処置毒性や免疫抑制薬,あるいは炎症性サイトカインによる肝類洞内皮細胞障害を起点として発症し,非心原性の浮腫,黄疸,有痛性の肝腫大などを臨床的な特徴とする致死的な移植関連合併症の1つである。VODは比較的移植後早期の血小板減少時期に発症する頻度が高いこと,また輸血不応性の血小板減少を合併しやすいことから肝生検による病理学的な確定診断を得ることは難しい。VODに特異的なバイオマーカーや画像診断法が欠如することに加え有効な治療法が確立されていない現段階では,VODの発症リスクの高い患者を見極め,それらリスク因子を回避する移植方法を選択することが重要と考える。また,VODには内皮細胞障害に起因する凝固異常症が併存するため,抗凝固作用に加えて内皮保護作用を併せもつ遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)の有効性を示唆する報告が集積されつつあり,今後の臨床応用が期待される。