「Summary」アンジオテンシンIIタイプ2(AT2)受容体のクローニングは1993年にスタンフォード大学のDzau研究室とバンダービルト大学の稲上研究室から同時に論文発表され, AT2受容体の機能解析研究が本格化された. しかし, AT2受容体に対する適当な(半減期の長い特異的な)阻害薬, 特異的AT2受容体刺激薬もなかったことなどにより, その作用機構のコンセンサスが得られないという状況が続いていた. しかし, 現在, 経口投与可能なAT2受容体刺激薬が開発され, AT2受容体の病態生理学的意義が次第に明らかにされてきているとともに, 臨床応用に向けたアプローチも進行中である. 「はじめに」従来からよく知られているレニン・アンジオテンシン(renin-angiotensin;RA)系のメインストリームは, アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme;ACE)により産生されたアンジオテンシンIIがアンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体に結合し(ACE/アンジオテンシンII/AT1受容体軸), 血管収縮, 酸化ストレス, 炎症などを引き起こして昇圧, 臓器障害に繋がる.