「Summary」2002年に発表されたアンジオテンシン変換酵素(ACE)2欠損マウスが心不全を発症するという論文で, ACE2/アンジオテンシン(1-7)/mas軸が一躍脚光を浴びた. その後非常に多くの研究がなされて, さまざまな疾患群においてACE/アンジオテンシンII/アンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体軸と拮抗する役割を果たしていることが明らかにされてきた. 一方で, 近年の報告により糖代謝を中心としてmas受容体独自の作用が明らかになりつつあり, 新規治療薬の開発にも結びつく可能性が示唆されている. 「はじめに」レニン・アンジオテンシン(renin-angiotensin;RA)系の生理活性物質としてアンジオテンシンIIが非常に有名であり, 生理活性もきわめて高い. 一方で, 8位のペプチド側から切られたペプチドがアンジオテンシン(1-7)であり, 1980年頃より米国のFerrario教授らがアンジオテンシン(1-7)の生理的意義について数多くの報告を行ってきたが, 2000年代になってからアンジオテンシン(1-7)の受容体の発見やアンジオテンシン(1-7)産生酵素であるアンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme;ACE)2が心不全の発症に関わっていることが報告され1), ACE2-アンジオテンシン(1-7)系が再び脚光を浴びてきた.