特集 インクレチンと心血管障害
DPP-4阻害薬の抗動脈硬化作用
Angiology Frontier Vol.12 No.1, 39-44, 2013
「Summary」ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-4阻害薬が2型糖尿病の血糖コントロールに広く用いられているが, この経口糖尿病治療薬は単なる血糖降下薬にとどまらない多面的作用がある. DPP-4阻害薬により上昇するグルカゴン様ペプチド(GLP)-1は食後高血糖, 食後脂質異常症を改善したり, 血圧を低下させる間接的な作用のみならず, 動脈硬化形成のプロセスに直接的に関与して動脈硬化の発症, 進展に抗する. また, GLP-1は血管内皮細胞の一酸化窒素(NO)産生を高め血管拡張性に作用し, 増殖能を高めて内皮障害を修復, 治癒方向に向かわせる. さらに, 酸化低比重リポ蛋白(LDL)によるマクロファージの泡沫化を抑制し, 血管平滑筋増殖および遊走を抑制する. 最近, DPP-4阻害薬にはGLP-1を介さない抗動脈硬化作用があることが示唆されている. DPP-4(CD26)に炎症やインスリン抵抗性を惹起する作用を有することが観察されたからである. さらに, DPP-4の基質にはGLP-1以外の分子が多数存在し, DPP-4阻害により不活性化を免れた分子の働きにより抗動脈硬化作用が発揮されることも想定されている.
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