腎臓は, さまざまなホルモンによる調節を受けてミネラルバランスを保つだけでなく, 自らが主要なビタミンDの活性化臓器として骨代謝に影響を及ぼしている. したがって, 腎機能が低下した状態で骨病変が生ずることは半世紀以上前から知られており, 腎性骨異栄養症ないし腎性骨症と呼ばれていた. 21世紀に入り, 腎機能の低下が心血管イベントや生命予後に影響を及ぼすことが認識され, 「慢性腎臓病」(chronic kidney disease; CKD)という概念が生まれた. それに続き, ミネラル代謝異常もCKD患者でこれらのリスクとして重要であることが重視され, 全身疾患として「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常」(chronic kidney disease-mineral and bone disorder; CKD-MBD)と呼ばれるようになった. 実際に, ミネラル代謝に関する血清パラメーターが心血管イベントや生命予後の予測に役立つことが次々と示されてきている. それでは, どうしてCKD-MBDは生命予後の重要なリスクになりうるのだろうか? 骨折を生じやすいこともその1つとして考えられるが, さらに重要なのが血管の石灰化であり, それは血管の狭窄部の内皮が石灰化するだけでなく, 中膜が骨化するような変化であることが示唆されている. これこそが, CKD-MBDを今回『Angiology Frontier』で特集として取り上げる最大の理由である. 実際, 学会でも最近のCKD-MBDのセッションはその半分の演題が血管石灰化ないし血管機能に関するものである. この特集をきっかけに, 主として心血管系の診療, 研究に携わる読者も腎機能の悪化に伴う異常に注目し, 新しい病態解明, 治療法につながることを期待したい.