「Summary」本邦において, 最初の上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるゲフィチニブが承認されて10年になる. 承認後, EGFR-TKIによる重篤な薬剤性肺障害, EGFR-TKIの効果予測因子であるEGFR遺伝子変異が明らかにされた. その後, このEGFR遺伝子変異がどのようなシグナル異常をきたすのかが解析され, また, この遺伝子変異によって肺癌が発生することが動物実験モデルで明らかにされた. さらに, EGFR-TKI耐性化機構などが解明されつつある. 本稿では以上の経過の概略やEGFR-TKIの使用法などについて触れ, さらにEGFR-TKI耐性化検出, 特に癌細胞由来の血漿DNAを用いたEGFR-TKI耐性化機構の新たな検出法についても触れたい. 上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor; EGFR)は, erbB受容体ファミリーに属する1)-3). EGFRは, リガンドが結合することによりホモダイマー化, あるいは他のerbB受容体とヘテロダイマー化をきたして下流に種々のシグナルを伝達する起点となる2)3).