「Summary」従来, 呼吸器疾患による循環系への影響は肺循環系に関心が寄せられていたが, 近年, 慢性呼吸器疾患における動脈硬化の合併が注目されている. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)において動脈硬化は代表的な肺外合併症であり, 喫煙を含む心血管リスクを調整後も, COPDあるいは1秒量低値は心血管死の有意な危険因子とされている. また, 気管支喘息や特発性肺線維症(IPF)も冠動脈疾患の危険因子とされている. さらに, 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中の間欠的な低酸素血症や交感神経の賦活化を介して, 二次性高血圧症, 糖尿病, 肥満と密接に関連しており, 動脈硬化のcommonな危険因子として広く認識されつつある. 「はじめに」動脈硬化は過剰な炎症, および血管内皮や平滑筋細胞への侵襲に対する線維化や増殖性反応の結果として生じる病変であり, 冠動脈疾患や脳血管障害の主病態と考えられている1).