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スタチンと血管

冠動脈プラーク進展抑制とスタチン:冠動脈イメージングを用いた評価

Impact of statin on the prevention of progression of coronary atherosclerosis;an assessment by invasive and noninvasive coronary imaging modalities

服部晃左尾崎行男

Angiology Frontier Vol.10 No.3, 29-34, 2011

Summary
 今までに施行された大規模臨床試験から心血管疾患に対するスタチンの有効性は確立されているものの,そのメカニズムは不明の点も多い。近年の血管内超音波(IVUS),IB-IVUS,VH-IVUS,光干渉断層像(OCT)などによる侵襲的,あるいは冠動脈CT(CTA)による非侵襲的冠動脈イメージングを用いた研究から,スタチン投与により冠動脈プラークは量的にも質的にも変化することが明らかとなった。今後は,おのおののイメージングの弱点を補完しあうmultiple imaging modalitiesを用いた研究や,今回有用性が示された非侵襲的なCTAなどを用いた大規模な検討が必要とされるであろう。

Key words
●スタチン ●OCT ●IVUS ●IB-IVUS ●CTA

はじめに

 近年,食生活,生活習慣の欧米化に伴い,狭心症,心筋梗塞などの虚血性心疾患は増加の一途をたどっている。この背景として,脂質異常症,糖尿病,肥満,高血圧などの,いわゆるメタボリック症候群に連なる冠疾患危険因子の関連が示唆されている。このなかでも,冠動脈プラークの進展に強く関与していることが示唆されているのは脂質異常症である。実際,脂質異常症治療薬であるスタチンは,過去に行われた一次予防,二次予防を目的とした前向きの無作為大規模臨床研究から,心血管イベントの抑制効果があることはすでに確立されている1)-5)。また,動脈硬化の進展が心血管イベントの増加に結び付くことも周知の事実であることから,これら動脈硬化進展のサロゲートエンドポイントとして,定量的冠動脈造影(quantitative coronary angiography;QCA)を用いた最小血管内径(minimum lumen diameter;MLD),血管内超音波(intravascular ultrasound;IVUS)を用いたプラークボリューム,光干渉断層像(optical coherence tomography;OCT)を用いたプラークを覆う線維性被膜の厚み,さらに冠動脈CT(CTA)によるプラークボリュームの変化も近年用いられるようになってきた6)-14)。
 しかしながらその一方で,急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI)を起こした部位における以前の冠動脈造影上冠動脈狭窄率は50%以下のものが約70%を占めていることや,また近年の病理学的検討から,急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)におけるプラーク破綻は全体の3分の2を占めるにすぎず,残る3分の1はプラークエロージョンという従来見過ごされてきた病変から発生することも明らかになってきている15)-17)。
 本稿では,これらの事実もふまえつつ,今までのスタチンを用いた冠動脈プラークの進展抑制試験のなかで,冠動脈イメージングから得られる指標をサロゲートエンドポイントとして用いた研究について検討する。

1 スタチンの効果についての初めての画像診断:QCAを用いた検討

 スタチンによる多くの大規模臨床試験のなかで,初期のランドマーク研究としては4S研究が挙げられる4)。冠動脈疾患の既往がある高コレステロール血症の患者において,シンバスタチンによるコレステロール低下に延命効果があるかどうかを検討したもので,4444例を対象にしたことが4Sの名前の由来となっている。結果は,総死亡がスタチンにより30%低下した。あまり知られてはいないが,同時期にロッテルダムでQCAを用いてシンバスタチンの効果を検討した研究(MAAS study)がある5)。381例を2群に振り分け,AHA分類に従い冠動脈の主要セグメントごとに解析したこの研究では,4年間の各セグメントの平均内径(mean lumen diameter;Mean LD)はプラセボ群が0.08mm進行したのに対し,シンバスタチン群では0.02mmの進行に留まり,したがって0.06mmの進展抑制効果が認められた。同様に,各セグメントのMLDはプラセボ群が0.13mm進行したのに対し,シンバスタチン群では0.04mmの進行に留まり,したがって0.08mmの進展抑制効果が認められた。このように,381例ではイベントに差は出ないものの,QCAによるMean LDとMLDというサロゲートエンドポイントを用いることで,冠動脈硬化の進展抑制がスタチンにより可能となることがこの研究以後示された5)。

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